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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第12回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

実家に住む75歳の母が最近、モノを捨てられなくなってしまいました。溜まった紙袋や使っていないタオル類、くたびれた洋服など、とにかく何でも捨てるのを嫌がって手元に残したがります。「これまだいるの?」と聞くと、必ず「いつか使うかもしれないから」「まだ使えるから」と言い訳ばかりで、モノは増えていく一方…。まだ体は丈夫ですが、将来のことを考えると、いまのうちから実家の片付けをしておいてほしいのですが…(48歳・会社員・女性)

 

【回答】

まず、お母さまは紙袋やタオルに埋まってしまって身動きとれない状況でしょうか? 身動きはできている? そうですか。それはよかった。

 

そして、「将来のことを考えると、いまのうちから実家の片付けをしておいてほしい」とは、「お母さんが死んだあと、そこに住むために私が掃除するのはイヤだから、キレイに片付けておいてほしい」ということでしょうかね。誤訳だったらごめんなさい。

 

お母さまのこれまでの人生はどんなものだったのでしょう。御歳75歳でいらっしゃるということは、幼少のみぎり、まだ食べるものにも事欠くような戦後を乗り越えてこられたのでしょうね。あのころは物が少なくて、なんでも貴重でした。鼻をかんだ紙だって、たたんでポケットにしまい、乾いたらもう1度使ったそうです。小さいころの経験で得た感覚は深く心にしみ込んで、どんなに周りの状況が変化しても変わることはありません。「三つ子の魂百まで」と言いますでしょう。だから、お母さまがあれもこれも捨てずにとっておきたいと思うお気持ち、わかります。わかってあげましょうよ。「実家に行くと胸のあたりまでタオルだらけで泳ぐようにして母を見つけ出します」というありさまでなければ、いいじゃないですか。あなたには「いらないもの」でも、お母さまには「宝もの」。とっておくことでお母さまの安心が手に入るなら、安いものです。無理やり捨てさせてしまうと精神的に落ち着かなくなってしまったり、喪失感から老人うつになってしまったりすることもありえますよ。ね、許してあげてください。

 

ときに、ため込んでいるタオルの1枚でも手にとって「これちょうだい。家で使うのにちょうどいいわ!」なんて言ってさしあげれば、なおOK。それが「子どもから親への愛」ですよ。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)
看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。

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