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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第14回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

東京で働いている息子が、“墓じまい”をしたいと言い出しました。私は先祖代々受け継いだお墓を毎月のように掃除しに行っているのですが、息子は「お墓参りなんてしょっちゅうできないし、お母さんが生きている間に処分しておいてよ」と言うんです。私も夫も、亡くなったら先祖代々続くお墓に当然のように入ると思っていたし、息子にもお墓を受け継いでいってほしいと思っていたのに…。あっさり「処分して」と言い出したことにショックを受けました(69歳・主婦・女性)

 

【回答】

「人は死んだらどうなるのかしら」という問いの正解は知る由もありませんが、人はそれぞれの心の中に、なんとなくイメージを持っているようです。そのイメージは「人によって違う」ものです。

 

さて、あなた様がご子息に受け継いで欲しいと願っているものは、先祖代々続く大事な「お墓」ですか? だったら、昨今いろいろな代行業者がありますから、ご依頼なさってみるのもひとつの手でしょう。ご子息を煩わせるまでもなく、お墓の掃除、命日のお参りと細やかな管理をして「お墓」を守ってくれるそうですよ。

 

それとも、あなた様がご子息に受け継いで欲しいと願っているものは、先祖を敬う「気持ち」ですか? 自分がこの世を去った後、時々は「母さん。俺、頑張ってるよ。そっちはどうだい?」なんて思い出してくれる。そういう「気持ち」ですか?

 

もし、あなた様がご子息に引き継いで欲しいと願っているものが「お墓」ではなく「気持ち」なら、「墓じまい」云々にはこだわらなくてもよさそうですね。

 

きっとご子息は、「人は死んだら、お墓にいる」というイメージを持っていらっしゃらないのですよ。どう思っていらっしゃるのかしら。もしかしたら、もっともっと亡くなった人を身近に感じることができる方なのかもしれませんね。日々の生活の中で花を見たとき、風を感じたとき、空を見上げたとき、そのつど「母さん、父さん」と心を寄せることができる子なのではないかしら。とても優しい子。そうであれば、「お墓」は必需品ではありません。

 

ものごとはすべて移ろうものです。あなた様が毎月お参りをして大切に守ってきた墓も、時代が変わり、人が変われば、やはり、変わってゆきます。そこには「よい」も「わるい」もない。ただただ、流れてゆくのみです。ご子息のお気持ちに、任せてみたらいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)
看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。

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