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【今週の悩めるマダム】

孤独です。夫を2年前に亡くして以来ずっと孤独でしたが、コロナで拍車がかかっています。もともと友人も少ないほうで、もう半年以上、まともに人と会っていません。お正月の親戚の集まりもなくなりました。いま私が死んでしまったって、誰も気づいてくれないだろうと思います。(奈良県在住・60代女性)

 

僕が30歳のときに作った『サボテンの心』という曲。加藤登紀子さんもカバーしてくださいましたし、一緒に歌ったこともあります。少し前のことですが、この歌を久々に歌い直してみて、救われた経験があります。『サボテンの心』の歌詞をちょっと読んでみてください。

 

砂漠の街で生きてる僕達は/心に棘を生やしている サボテンの心/身を守るために 生やした棘のせいで/大切な人達を 遠ざけてしまう/星が灯る空を見上げて サボテンは今日もひとり/冷たい月の光に包まれて 明日を待ち続けてる/砂漠のサボテン達よ 花を咲かせてごらん/きっと 誰かが きみに 声を掛けてくる

 

当時の僕は、毎日のように息苦しさを感じて、もがいていたんです。人への不信感がぬぐえず、サボテンのように、心に棘を生やしていた。その棘は鋭く、人を近づけなかったわけです。綺麗ごとをいう社会も、お世辞ばかりいう社会も、悪口ばかりいう社会も、リスペクトのない社会も、僕にとっては息苦しかった。まさに、砂漠の中で棘を生やしたサボテンだったのです。

 

離婚をした直後、僕は世の中にフルボッコにされました。そして、子どもを育てながら、必死で生きました。そんな生活が丸7年も続いています。いま振り返ると、当初は明らかに孤立していました。ただ、僕の場合は幼い息子がいたので、自殺とか逃避はできませんでした。そんな辛い日々を送っていた最中に、僕は思わず自分の歌に励まされることになるのです。掃除をしていたら、古いCDが出てきて、何気なくかけてみたら……。自分が書いた「棘を生やしているサボテンの心」のフレーズが刺さりました。

 

棘を生やせば変な連中が近づいてくることもないですが、同時にその棘のせいでいい人たちも近づいてこなくなります。どんどん、孤立していくんです。そこである日、歌詞に書いてあるように、「サボテンの心に花を咲かせてみよう」と思い立ちます。「そうだ、孤独と孤立は違うぞ」と気づきました。孤独はいいけど、孤立はダメなんです。孤立は周囲の声に耳をふさいでいる状態。孤独はむやみに人と群れずに自分を大事にしている状態です。

 

「サボテンの心に花を咲かせること」とは、歌うことだったり、愛を分け合うことだったり、心理的にだれかと繋がっていく作業でもありました。いまでは、僕と同じように苦しいと思って生きているサボテンの心を持った人たちに花を咲かせてもらいたい、と思うようになりました。もしよければ、僕のYouTubeチャンネルにもあがっているので聴いてみてください。死にたいと思ってもいいですけど、どうか生きてください。そして、小さな花を咲かせてください。誰かがきっと声をかけてくることでしょう。

 

【JINSEIの格言】

孤立していた僕はある日、「サボテンの心に花を咲かせてみよう」と思い立ちました。それは、歌うことだったり、愛を分け合うことだったり、心理的にだれかと繋がっていく作業でした。

 

この連載では辻さんが恋愛から家事・育児、夫への愚痴まで、みなさんの日ごろの悩みにお答えします! お悩みは、メール(jinseinospice@gmail.com)、Twitter(女性自身連載「JINSEIのスパイス!」お悩み募集係【公式】(@jinseinospice)、またはお便り(〒112-0811 東京都文京区音羽1-16-6「女性自身」編集部宛)にて絶賛募集中。 ※性別と年齢を明記のうえ、お送りください。

 

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「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載

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