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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第65回>

数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

“元父親”のこれからの世話をどうするか悩んでいます。父は15年以上前に母と離婚していて、すでに還暦を迎えました。離婚後はずっと一人で生活しているようで、今後、新たなパートナーと一緒になる雰囲気もありません。私は離婚してからも父と定期的に会っており、嫌いなわけではないので、今の姿を見ていると「父はこれから孤独な生活を送るのではないか」と心配になります。一方、だからといって私が今後の父の世話を見ると、父ばかりが苦労せずに甘い蜜ばかりを吸い、今まで私と妹を一人で育てた母が損しているようで、母にとても申し訳ない気もして……。まだ先の話ではあるのですが、どういう選択肢を取ればいいのか答えが見つかりません。そもそも、父と母、両者が納得できる方法はあるのでしょうか。(27歳・男性・会社員)

 

【回答】

子としてのお立場、そしてご心情、伝わってくるものがあります。まだまだお若いのに、ここまで考えが及んでいらして敬服いたしました。立派にお育ちになりましたね。

 

さて、最初に思いましたことは、「離婚は親の問題、親の身勝手」ということです。もちろんご両親さまにもやむにやまれぬ理由があってのことだったとは思いますが、離婚はやはり親の都合です。

 

子どもは言わばまき込まれてしまっただけ。だから、「今まで私と妹を一人で育てた母が損しているようで、母にとても申し訳ない」と気に病む必要はまったくないと思うのです。そこまであなたが責任を負う必要はありません。

 

どんなことでもそうですが、「これからどうしようか」と考えるとき、まず主軸になるのは「自分はどうしたいのか」でしょう。自分の気持ち。自分の希望。自分の願い。それ以外にしっかりとした原動力となり得るものはないのです。無理や我慢をして「自分はどうしたいのか」に矛盾する行動を取ったとしても、そこにはろくなものが生まれてきません。

 

あなたは今「父ばかりが苦労せずに甘い蜜を吸う」とか、「母が損している」とか、なんだか「軸」が自分以外の人にいってしまっていますね。それらのことは、自分の気持ちが決まってから、配慮すればいいことではないかしら。

 

お父さまとお母さま、共にご納得いただける方法は、あなたの「軸」を真ん中にして成り立つものだと思うのです。だから、まずはごちゃごちゃとしたしがらみをひとつひとつ払って、純粋に「自分はどうしたいのか」だけを考えてみてください。そこに答えがあると思います。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。

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