有森也実『東京ラブストーリー』“おでん女”さとみの手料理がシチューじゃダメだった深い理由
画像を見る 自由奔放な赤名リカ(鈴木保奈美)と優柔不断なカンチ(織田裕二)

 

■『リカとカンチの邪魔をするな』とカミソリ入りの手紙が

 

「ねえ、セックスしよ」というセリフがあるように積極的で快活なリカに対し、さとみは依存心が強く、重たい恋愛をするタイプ。

 

「9話で永尾完治君の家に手料理を持っていくシーンがありました。ディレクターが、さとみなら何を持っていくのか考えて思いついたのがおでんだったそうです。洋風のシチューや普通すぎる肉じゃがではなく、さとみの和のイメージと少し手間がかかりそうな料理ということで。そのおかげで視聴者から“おでん女”といわれるようになったのですが(笑)」

 

リカとさとみの間で苦悩するのがカンチだった。

 

「さとみもまた、永尾君か三上君かを決めきれないでいる。織田さんから『お互い優柔不断で難しい役だよね』と話しながら、よくスタジオの隅のほうで台本の読み合わせをしていました」

 

リカに会いに行こうとするカンチを引き止める展開から、さとみは2人の恋路を邪魔する嫌な女性だと捉えられた。

 

「役とはいえ、仲のいい友人からも『也実を憎たらしいと思ったのは初めてだよ』なんて言われたことも。また、事務所の人が中身をチェックしていたので直接目にすることはありませんでしたが『リカとカンチの邪魔をするな』と、カミソリが同封された手紙が届いたこともありました」

 

世の女性からは、だいぶ嫌われてしまったが、それだけ役を演じきり、インパクトを与えたということ。だからこそ、約30年たった今でも、トレンディドラマの名作といわれているのだ。

 

【PROFILE】

有森也実

’67年、神奈川県生まれ。中学3年生のときに雑誌『mc-Sister』の専属モデルを経て芸能界デビュー。’86年の映画『キネマの天地』でヒロインを演じ、日本アカデミー賞など各賞を受賞。以後、多くのドラマ、舞台で活躍している

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