「当時はまだデビューしたての17歳。人気のクラッシュ・ギャルズさんやダンプ松本さんのバーターみたいな感じで、ドラマに出させてもらったんです。年間300試合くらいあってほとんど休む暇がないのに、試合でアザを作ったり輸血したりしても、夜中から撮影していました」
こう語るのは、元女子プロレスラーのブル中野さん(56)。
「頻繁にサブタイトルに『ポコチン』という言葉を使っていて、コンプライアンスが甘い時代でしたが、“攻めているな”って思っていました」
そんな“問題作”で主役を務めたのは、木村一八。
「パート2では、西川弘志さんも出演。スタジオでも一八さんと楽しそうに話をしていて“やすきよ”は子供同士も仲がいいんだって思いました」
中山美穂とは、空き時間にダンプ松本とともに、じゃれ合って遊んでいたという。
「広いスタジオでかくれんぼしたり。大きなお尻のダンプさんはすぐに見つかるのですが、先輩だからなかなか言えない。かといって小さい体を縮めて一生懸命かくれている美穂ちゃんも、見つけちゃいけない雰囲気で……。結局、いつも私が鬼でした(笑)」
こうした俳優陣に、演技経験ゼロでぶつかっていった。
「私の出番はドタバタの乱闘シーンで、セリフも『テメー、コノヤロー』くらい。ダンプさんも台本を読んだりしないし、打ち合わせもろくに聞いていなかったから、スタッフから怒られました。撮影は私服だったのですが、お金がなかったので、すってんてんのズボンにありえない色の靴下をはいていたりして、映像で振り返ると恥ずかしくなります」
忘れられない大失敗は、大雪の日の撮影だ。
「電車が止まって4時間くらいの大遅刻。プロレスなら殴られて終わりですが、さすがに俳優さんはそんなことしません。むしろ“殴ってください”という気持ちで、申し訳なさすぎて謝ることもできませんでした。あとから聞いたら、私を待っている時間、マネージャーがスタッフからすごく怒られたそうです」
だが、長い撮影期間を経てスタッフとも絆が生まれ、撮影の最終日には花束を贈られた。
「まるで女優さんみたいに扱ってくれて、すごくうれしかったですね。プロレスでは悪役で嫌われ者でしたが、ドラマに出たことで、そうした見方もすごく変わったと感じました」
『毎度おさわがせします』(TBS系、1985~1987年)
ニュータウンを舞台に「性」に興味津々な中高生とその親たちが繰り広げるかなりエッチなドタバタ劇。セミヌードも披露したヒロイン・森のどかを演じた中山美穂は一躍トップスターに。C-C-Bが歌う主題歌『Romanticが止まらない』も大ヒット。
【PROFILE】
ぶる・なかの
1968年、東京都生まれ。中学1年生で全日本女子プロレスの練習生となる。ダンプ松本率いる極悪同盟に加入後、一躍人気レスラーに。1993年から米国に遠征、WWF女子王座(当時)を獲得するなど大活躍した。現在はYouTube「ぶるちゃんねるBULLCHANNEL」で発信。