小倉一郎から小倉蒼蛙に改名 画像を見る

「今日の取材のために『熱中時代』のDVDを見返してきたんです。暗いままにならないように、シーンの終わりに笑いを交えたりしているので、テンポよく見られるし、教育という普遍的なテーマだから、全然、古さを感じないんです」

 

こう語るのは小倉一郎から改名した小倉蒼蛙さん(73)。主役の水谷豊とは、吉永小百合主演の映画『青春の海』から交流があるという。

 

「水谷はまだクラスメートのエキストラ役。下田で撮影合宿をしていて仲よくなってね。立川にあった水谷の実家にも遊びに行きました。お友達ルームに3段ベッドが2~3個あるような不思議な家で、翌朝、お姉さんが作ってくれたなすのしぎ焼きがおいしくて、今でも忘れられないほどです」

 

その後『傷だらけの天使』で注目を集めた水谷とは、『ほおずきの唄』(ともに日本テレビ系)でも共演した。

 

「そのときの監督が田中知己さん。水谷の主役作品を作るぞということになり、『熱中時代』が企画されたと聞いています。約5年前、『相棒』(テレビ朝日系)に出演したとき、水谷に田中さんの近況を聞くと『このあいだ遊びに行ったけど、元気だったよ』と答えていました。いまだに当時の恩人とお付き合いしているのだから、さすがだなって思います」

 

ドラマでは、ベテラン勢の存在も大きかった。

 

「船越英二さんは大映のスターで、やっぱり映画のスクリーンを飾っていただけあって、いるだけで貫禄がある。頭の上から出すような声で『北野くん』と呼ぶだけで“やさしい校長”を表現していました」

 

数々のエピソードの中でも、忘れられないのが「涙の父母参観日」。

 

「参観日は、よくできる子に当てて時間内に終わらせる先生が多い中、水谷演じる北野広大は、あえて分数ができない子にやらせるんです。クラスメートや親からもブーイングがある中、その子の母親も申し訳なさでいっぱいなのですが、『もう少しやらせてください』と必死で教える。そして最後、ようやく計算ができた子を“よくやった”と抱きしめるんですね」

 

このような心に残る脚本を世に送り出したのが、布勢博一さん。

 

「名作が多い“ふせばく”さんの中でも、同ドラマは代表作。脚本を書くため、3年くらい児童心理学者に取材していたそうです。撮影も、今はテストを1回やって“はい、本番”ですが、当時は週2日も稽古日があったんです。お金や時間に余裕があり、丁寧に“こしらえている”という感覚がありました。だからこそ、良質な作品となったのでしょうね」

 

『熱中時代』(日本テレビ系・1978~1981年)

“金八先生”より1年早く生まれた学園ドラマの金字塔。小学校の新任教師・北野広大(水谷豊)が、型破りな教育方針で子供たちに向き合っていく。同じ日本テレビ系の『世界一受けたい授業』でも使われた主題歌の『僕の先生はフィーバー』が耳に残っている!

 

【PROFILE】

おぐら・そうあ

1951年生まれ、東京都出身。数多くのドラマ、映画に出演する傍ら、俳人としても活躍。小倉蒼蛙第4句集『優しさの手紙』(書肆アルス)を3月下旬に刊行する。また、NHK連続テレビ小説『あんぱん』にも出演。

 

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