利勝さんによれば、施設に入った当初は、いつ家に帰れるのかと、施設の職員に対して、来る日も来る日も責めるように質問を続けたそうだ。

Dsc_7947「食事がカレーの日があるんです。そしたら、『林君、いただきますの挨拶をしてくれるかなあ』みたいな、わざとらしいこともさせられましたね。それで僕が言った途端にみんなが拍手する。年上の子供たちからの暴力的ないじめは毎日のように続きました。2人のお姉ちゃんもずいぶんいじめられたようです。それからお父さんとお母さんのことを根ほり葉ほり聞かれました。でも、僕と妹は事件についてはさっぱりわかっていなかったので、長女から『お父さんとお母さんが離婚してここに入って来たと言っておきなさい』と言われていました。そして『4人で頑張って行こう』と…両親が逮捕されたことはうすうす感じていましたが、実際詳しいことは何も知りませんでした。事件の詳細がそれなりにわかったのは、中学生になってからですね」

三女の幸子さんは現在高校1年生。彼女の場合は、施設に入った4歳から中学1年生になる約8年間、両親が離婚して施設に預けられているとずっと思っていたそうだ。

「それまでお姉ちゃんもお兄ちゃんも、私に事件のことは話しませんでした。中学生になって、事件のことをテレビで見たりするうちにだんだんわかってきました。それでお兄ちゃんに聞いたら、これまでにこういう事があったんだよと、初めて教えてくれたんです。最初はショックでしたね。お母さんとは、小学校5年生の時に初めて面会しているんです。でもその時は、なんでこんなガラス越しでしゃべるんだろう…と。理由を聞いても誰も教えてくれませんでした」

と両親との記憶がまったくないまま施設で育った幸子さん。
年の離れたいちばん下の妹に、自分たちが受けている苦痛や苦悩を味あわせたくないと、姉と兄がずっと気を遣ってきたのである。とくに2人の姉は幸子さんに優しく、「ご飯を作ってくれたり、相談に乗ってくれたりと、母親のように何でもしてくれるお姉ちゃんです」(幸子さん)

そんな母親代わりの2人の姉・長女は現在25歳。すでに結婚して子供が1人いる。もう1人の姉・次女は24歳。現在1人暮らしをしながら働いている。

続きは明日4月24日シリーズ人間【林眞須美和歌山カレー事件・林家の10年毎日更新

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