「安倍さんは、外交に関してはよくやっていると思います。中国、ロシア、韓国、北朝鮮との関係、そして中国を取り囲む周辺国との関係強化など、上手な外交をやっています。点数にすると90点……と言いたいところですが、実際は75点ですね」
元外務官僚で、作家の佐藤優さんは、上半期の安倍外交について、一定の評価を下すものの、ある人物の問題発言によって、安倍外交の評価が大きく下がったと語る。
「橋下大阪市長の一連の“慰安婦問題発言”です。安倍政権とはまったく関係のない橋下さんの発言でしたが、これが日米関係はもとより、国際社会における日本のイメージをすごく悪くした」(佐藤さん・以下同)
佐藤さんは、この橋下発言直後に、安倍総理の政治主導で、慰安婦問題に関しては、「歴史認識の中で、歴史学者に任せる」。『在日米軍は風俗を使え』発言については、「こんな話はとんでもない。日本政府としてはまったく関係のない発言だ」と、橋下市長を猛烈に批判しなかったことが、その後の日米関係を悪くしたと話す。
「すぐに安倍さんが批判していたら、アメリカの世論は『ああ、橋下の価値観とは違うんだな』となったはず。ところが、安倍さんが明確に打ち消せなかったことで、事態は深刻になり、傷口が広がった。その結果、日本人全体がそう思っていて、安倍さんも橋下さんと同じことを考えているという印象をもたれた。それをいまだ払拭することができていない状況です」
一般的には、対中国や対韓国との関係悪化がマイナス評価になると思われがちだが、この上半期で危うくなったのは、もっとも重要な日米関係だと佐藤さんは指摘する。では今後、日米関係を改善するためには、何をすべきか?
「まずは、慰安婦発言のような価値観をめぐる問題をクリアしないといけない。そしてオバマさんと頻繁に会うこと。6月に中国の習近平国家主席が、オバマさんとノーネクタイで会談しましたよね。あのような首脳会談をやることが重要です。首脳間での個人的な信頼関係をつくることが大事です」