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安保法制の国会審議が大詰めを迎えた9月15日、毎週金曜日に国会前でデモを行っていた学生グループ「シールズ」の中心メンバー、奥田愛基(あき)さん(23)が、参議院「特別委員会」の中央公聴会に公述人として出席。

 

安倍政権が強引にすすめる安保法制について、堂々と反対の意見陳述を行い、スピーチの終盤、こう語った。

 

「ある金沢の主婦の方がフェイスブックに書いた国会答弁の文字起こしは、瞬く間に1万人もの人にシェアされました。ただの国会答弁です。ふだんなら見ないようなその書き起こしを、みんなが読みたがりました。なぜなら、(安保法制に)不安だったからです」

 

この言葉を聞くなり、あふれる涙を抑えきれず、何度もハンカチで目頭を押さえる女性の姿が傍聴席にあった。小原美由紀さん(50)。この女性こそが、奥田さんがスピーチで言及した“金沢の主婦”であり、メンバーから「シールズの公認お母さん」と呼ばれている人物だ。小原さんは、安保法制に反対するデモを、ここまで盛り上げた立役者の1人といっても過言ではない。

 

「デモで僕に話しかけてくる人のほとんどが、『小原さんの投稿を見て来たんですけど』って、言うんですよ(笑)」

 

奥田さんも、冗談まじりに話すほど影響力を持っている。彼女は、学生たちが、秘密保護法に反対するデモを始めた昨年2月ごろからインターネットの動画配信サイトで彼らの国会前スピーチをチェック、その内容を書き起こし、フェイスブックに投稿することで彼らの主張を広めてきた。

 

その努力が、大きく実を結んだのが今年の5月27日。奥田さんの意見陳述に引用された国会答弁が行われた日だ。なぜ、国会答弁まで書き起こそうと思ったのか――。

 

「安保法制の矛盾を、わかりやすく指摘する野党議員に対して、安倍総理の答えは、あまりにも意味不明だったからです。多くの人に、この答弁の内容を編集せず知らせることが、法案を止める近道かもと思って」

 

この時期から、確実に世論が変わり始める。それまで、毎週金曜日の国会前デモに訪れていた人は2,000人ほどだったが、週を追うごとに4,000人、1万人、10万人と膨らみ、強行採決されてしまった現在でも、各地でデモは続いている。

 

小原さんは、22歳、20歳、15歳の男のコの母親。シールズを応援し始めた動機をこう話す。

 

「自分の子どものような彼らが、顔も名前もさらけ出して、安保法制反対の声を上げてくれている。相当風当たりもきついと思います。だから私も、戦争できる国にしないために、自分ができることをして応援したい。そう思って彼らのアクションを紹介し始めたんです。これなら、1人でも、金沢にいても、できるから」

 

小原さんのこうした地道な活動は、実は最近始まったことではない。

 

「金沢に30年続く『平和サークルむぎわらぼうし』という市民グループがあって、20代前半から参加しています。地元の被爆者の方の体験をお聞きしたり、原爆や戦争をテーマにした朗読劇を毎年開催したり。子どもが小さい間も、この活動だけは続けていたので社会的な関心を持ち続けることができました」

 

9月15日、奥田さんが出席した公聴会終了後、メンバーと面会した小原さんから返ってきたのは、冷静な答え。「忙しそうだったから、金沢土産を渡して帰ってきました」。しかし、奥田さんらと話して、今後に対して決意も新たにしていた。

 

「私はこれからも、先輩方から受け取った平和への思いを未来の世代へと引き継いでいきたい。そのために、自分らしいやりかたで、その役割を果たしていきます」