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「日本は80歳以上の方が1千万人を超え、国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会です(’15年・総務省)。また、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を表す合計特殊出生率も1.42と、少子高齢化に歯止めがかかりません(’14年・厚生労働省)」

 

そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。そんな止まらない少子化に対し、厚生労働省が進める新たな2つの少子化対策が明らかになった。

 

「1つ目は、女性の再就職支援策です。無料託児所付きの専門学校などを増やし、子どもを預けて職業訓練を受けられるようにします。求職中の女性はハローワークを通じて講座を選び、子どもは専門学校などと提携した託児所に預けます。託児費用は国の補助金でまかないます。出産などを機に、いまだに約6割の女性が退職するといわれます(’13年・内閣府)。働いていないブランクの期間が長いほど再就職は難しいので、訓練を受けスキルアップできれば、自信もついて再就職にも有効でしょう」(荻原さん・以下同)

 

2つ目は、男性の育児休暇(以下、育休)を取りやすくする施策だ。育休とは、子どもが1歳になるまでは仕事を休める制度。保育所に入れないなどの理由があれば、1歳半まで延長できる。

 

「本来、男女に関係なく取得できますが、その取得率は女性の86.6%に対して、男性はわずか2.3%(’14年度・厚生労働省)。そこで、男性の取得率アップに特化した施策が検討されています。その中身は、過去に3年間に男性の育休取得者がいない企業で、1人目の育休取得には30万円の助成金を、5人目までには15万円を、企業に支払うというもの。すでに男性の育休取得者がいる企業は除外されますから、対象はおもに中小企業と考えられます」

 

安倍首相は自民党総裁再選後の会見で、少子化対策に注力し、目標である出生率1.8を実現すると発言した。荻原さんは、「そのためには、2つの施策も大切ですが、国には、もっと大局的な改革を望みたい」と語る。

 

「なにより、教育費の問題です。今、国民の平均年収は約414万円です(’13年・国税庁)。しかし、子ども1人が幼稚園から大学卒業まで、すべて国公立でも約1千万円かかります(’12年・文部科学省)。『とても育てられない』と感じても不思議ではありません。フランスでは年間学籍登録料の2万〜3万円を支払えば、大学の入学金も授業料も無料です。日本ほど大学費用が高く、奨学金制度が整っていない国はありません(’13年・文部科学省)」

 

待機児童や保育士の待遇改善など、少子化対策には問題が山積み。政府が、どんな抜本的な改革を行うのか、注目したい。

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