image

「(環境基準値を超えた)ベンゼン、ヒ素が出たとの報告を昨日(29日)受け、大変驚いています……」

 

9月30日、東京都庁で行われた定例会見で小池百合子都知事(64)が、そう語った。

だが、この豊洲問題の元凶は「有害物質が公表されていた土地を、購入しようとしたことだ」と言うのは、全国紙の都庁担当記者のひとり。

 

「都と東京ガスとの購入交渉は水面下で進められ、’01年7月に売買契約が結ばれたわけですが、都はその交渉内容を明らかにしていません。しかも、同時期に成立した土壌汚染対策法(以下「土対法」)の立法の過程で、都が深く関与した疑いがあるのです」

 

土対法とは《特定有害物質による土壌汚染の状況の把握と健康被害の防止に関する措置》を定めた法律で、’02年5月に国会で可決、’03年2月に施行されている。しかし豊洲の“汚染地”は同法の適用外だった。当時、民主党衆議院議員でこの“土対法疑惑”を調査することになる川内博史氏(54)が振り返る。

 

「’02年1月に中央環境審議会がまとめた『報告書』(=土対法案の基にする文書)になかった条項《附則三条・経過措置》が、2カ月後に国会に提出されたときの法案には、なぜか追加されていた。これは《この法律の施行前に使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地については、適用しない》という重大な“但し書き”です。つまり『東京ガスの豊洲の土地は、調査せずに市場として使用できる』ように、抜け道が作られたわけです」

 

これで、汚染物質が検出されていた豊洲の土地が、法的に市場として使えるようになってしまったのだ。では、この附則三条は“いつどこで誰が”付け加えさせたものなのだろうか。川内氏は、以後数十回にわたって国会などで追及した。

 

「議員会館の私の部屋で当時の環境省の担当者(課長クラス)に、私が『東京都側の代表者は誰ですか?』と問うと『それは浜渦さんです』とハッキリと答えています」

 

この“代表者”として浮上した人物・浜渦武生氏とはどのような人物なのか?その浜渦氏は本誌の文書での質問に応じ、電話で次のように話し始めた――。

 

「浜渦と申します。お手紙をもらいましたのでね」

 

声のトーンはやや高く、柔らかい。紳士的な対応にも感じられる。

 

――環境省との都側としての土対法を巡る交渉はあったのでしょうか?

 

「私の方はそういうことはしておりません。環境省との交渉はやっておりません。誰なの、これ言ってるのは? 私の名前を。個人的には、私は石原さんが環境庁長官(’76~’77年)をしていたこともあり、環境行政には非常に厳しいほうです。小池さんも環境大臣を経験しているけれどね。もし(環境省側から)聞かれれば言ったでしょうけど、私は交渉したことはありません」

 

――土壌汚染が公表されていた土地の購入を進める際“食の安全”への懸念はなかったのでしょうか?

 

「土壌汚染については、よ~く知っておりました。(東京ガスとの交渉は元々)前任の(福永正通)副知事が担当していまして、ボクは途中で変わったんですが、土地の浄化というのが購入の条件でした。東京ガスが土地をきれいにするというのを前提にしての交渉だった。まあ、築地市場だってあなた(耐震性や衛生面などを)調べた方がいいよ。はい、以上です」

川内氏の指摘を完全に否定した形になった。また本誌は、土対法を所管する環境省に当時の事実関係の確認を依頼すると、同省土壌環境課・担当者は、

 

「土対法の附則三条に関する環境省と東京都の交渉の事実は記録上、過去にありません。土壌汚染に関しては’01年10月、当時の石原都知事から川口環境大臣宛に文書で《市街地の土壌汚染対策の法制度を確立してほしい》という要望がされているのが、記録として残されています」

 

との回答。さらに東京ガスにも質問書を送り、見解を求めたところ、同社広報部から次のような回答があった。

 

「弊社は土壌汚染対策に真摯に取組み、対策完了を東京都にご確認いただいております。さらに東京都から市場立地のために追加の土壌対策を要請され、追加の上乗せ対策を実施しております。その後、東京都が実施した土壌汚染対策工事の費用の一部を負担いたしました。当社としましては、東京都に対し、一私企業としてでき得る範囲のご協力はさせて頂いたものと考えております」

 

このように、浜渦氏と環境省、東京ガスの回答は少しずつ食い違っていた。その後「改正土対法」が’10年に施行されて、附則三条は削除された。

 

「これで豊洲は土壌汚染区域となり、地下水モニタリングなどの調査が義務づけられた。いま汚染や偽装が次々に炙り出されていますが、あのまま豊洲が開場していたと思うと……」(前出・和知さん)

 

小池都知事は「(石原氏への)ヒアリングの調整はまだできていない」と会見で話した。果たして責任追及はしっかりとなされるのか――。

関連カテゴリー: