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「豊洲市場建設にかけた総費用と、築地改修の費用の計算、さらに今後の市場のあり方の見通しを考えていくのが極めて重要だと考えています。(豊洲市場のライフサイクルコストや損益などの)数字はさまざまな分析をした試算です。目安として念頭に置き、未来を見据えた判断が必要だと考えています」

 

1月27日の定例記者会見で、小池百合子都知事(64)は表情を引き締めてこう語った。小池都知事は就任後1カ月の昨年8月31日、「築地市場の豊洲新市場への移転を延期します」と宣言して以来、記者団から「移転」か「中止」かの判断について会見のたびにたずねられ、コメントしてきた。

 

「歴代市場長5人が(豊洲の地下空間に)盛り土をしないとの変更を『知らなかった』とは“無責任体制”と言わざるをえない。食の安全をないがしろにした市場は、そもそもありえない」(9月23日)

 

「(環境基準を超えた)ベンゼン(=発がん性物質)、ヒ素が出たとの報告を受け、大変驚いています」(9月30日)

 

今年1月14日、最新の地下水調査で環境基準の79倍ものベンゼンが検出されたことを受け、「いい数値が出ないだろうという不安を超える数値が出てきて、驚いている」とコメントし追加調査を決定。

 

1月20日の会見では「専門家会議の科学的な評価を踏まえて、総合的な結論をする」とこれまでどおり明言を避けたものの、質疑応答では、「安全性が数値で確認されても、『本当に大丈夫?』という消費者の心理もある。私も消費者の1人だと思っており、しっかり考えていきたい」と一歩踏み込んだ印象の発言もあった。

 

築地市場の仲卸業「小峰屋」の和知幹夫さんは次のように話す。

 

「やっぱり“小池さん以前”はお役所仕事だったんだね。発がん性物質ベンゼンが79倍出ているうえに年間100億円も赤字も出る場所での営業なんて、私たち業者はコワくて行けないよ。お客さんにも安心して来場してもらわなければいけないんだから。赤字が出続ける豊洲より、食の安全が守られる築地を、小池さんは選んでくれると思う。都議選前に移転を白紙撤回して、築地の再整備、改修という方向性をぜひ示してほしいですね!」

 

こうなってくると、もはや都知事の口からいつ“重大発表”がなされるかという時期だけが気になるところ。

 

「早ければ6月にも『中止』の意思を示す可能性もある」と分析するのは、築地市場移転問題を10年前から取材し続けているジャーナリスト、池上正樹さんだ。池上さんはこう続ける。

 

「3、4月の地下水の追加調査結果や専門家会議の提言などの内容で『移転NO!』という世論が盛り上がれば、その追い風に乗って東京都議会議員選挙(7月2日投開票)の前に都知事が意思を表明するというシナリオは、ありうると思います」

 

次々に“驚くべき数字”が報告される築地市場の豊洲移転問題−−。小池都知事の最終判断が待たれる。

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