尖閣諸島問題で日中関係がいまなお揺れる一方で、中国で排出された、人体に深刻な影響を及ぼす”恐怖の有害物質”が、国境を越えて日本にやってきていた。
世界保健機関(WHO)によれば、すでに6年前の’07年には中国で、実に65万6千人の人が大気汚染が原因で死亡したと推測されている。その汚染された大気のなかでも、特に危険視されているのが『PM2.5』という微粒子状の物質だ。兵庫医科大学の島正之教授によると、PM2.5は呼吸器障害や循環器障害などの病気を引き起こす原因と見られているという。
「微小なPM2.5は肺の奥まで入りこみ、呼吸器の炎症、ぜんそく、気管支炎などを起こしたり、長期的には動脈硬化、心臓疾患、脳梗塞などを誘発するのでは、といわれています」
1月、中国ではこのPM2.5の大気中濃度が、WHOの基準値の20倍以上に達する日もあったという。恐ろしいのは、汚染された大気は中国国内のみの問題ではなく、気流に乗って日本にも到達しているということだ。
環境省大気環境課が1月に福岡市内でPM2.5の大気中濃度を測定したところ、「やや高い傾向が見られる」という結果を得た。さらに、山形県蔵王の樹氷を作る雪も、有害物質に汚染されていると報告されている。また、日本海沿岸はもとより、太平洋側や北海道でも中国からと見られる汚染物質が観測されているという。そんなPM2.5から身を守る方法を、慶應義塾大学医学部の長谷川直樹准教授が教えてくれた。
「PM2.5は微小な粒子であるため、一般的なマスクでは防げません。医療現場やアスベスト対策の工事現場で利用されるようなマスクでないと十分にブロックすることはできないのです。また、汚染物質は消化器官や皮膚から体内に入りこむことも考えられるので、外から戻ったらうがいや手洗いをし、外出時も肌の露出はなるべく避けたほうがいいでしょう」