中国の“毒食品騒動”が止まらない。先月、中国南部・広州市周辺で流通する米の半分近くが、カドミウムに汚染されていたことが判明した。カドミウムは四大公害病のひとつ、「イタイイタイ病」の原因物質として知られる有害物質だ。中国国内では、汚染された“毒米”を避けようと、北部で生産された米や、輸入のタイ米を買い求める消費者が増え、値段も高騰している。

 

ところが、中国で大問題になっているこの“毒米”が、日本では「安全」とされ何の問題もなく流通しているというのだ。どうして、こんなことになっているのか――?

 

現地からの報道によると、中国のカドミウムの安全基準値は、1キログラムあたり0.2ミリグラム。広州市周辺に流通して問題になった米からは、0.21〜0.4ミリグラムのカドミウムが検出され、これを食品薬品監督管理局が発表して、市民が大騒ぎになった。

 

だが、これを日本に当てはめてみると、日本の食品衛生法で定められたカドミウムの安全基準値は、1キログラムあたり0.4ミリグラムだ。中国の基準値の2倍の数値にあたる。だから、中国の“毒米”も、日本の基準に合わせれば、まったくの「安全なお米」ということになってしまうのだ。現在、中国では0.2ミリグラムを超えるカドミウムが検出された“毒米”は流通できない。では、それらの米はどこへ――? そう考えると、日本へ入ってきても不思議はない。

 

海外から食品を輸入するときは、検疫を通る。ここでよく中国からの食品に違反が見つかっているのだが、厚生労働省の食品安全部監視安全課に聞くと、「(輸入)米のカドミウムの検疫基準は、国内と同じ0.4ミリグラムです」とのこと。ということは、中国で違反とされた“毒米”も、日本の基準値以下であれば、堂々と入ってこられるのだ。重ねて厚労省に聞くと「その可能性はある」と、あっさり認めた。

 

日本では「安全」とされた米でも、中国では違法の“毒米”とされる現実……。ひょっとしたら中国の人々は、日本の米を指さして、こうわらっているかもしれない。「日本人が食べているのは、毒食だぞ」と――。

 

取材・文/青沼陽一郎(ノンフィクション作家)

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