10月22日の『阪急阪神ホテルズ』の発表を皮切りに、メニューの“偽装表示”が次々と発覚している。その中には「フカヒレ→春雨」「からすみ→タラ・サメの卵」「アサヒ熟撰=スーパードライ」など、表示していたものとは、まったく別のものを提供していたところもある。
本誌は続々と公表される“偽装メニュー”を集計した。その結果、“偽装メニュー”の提供は全国947店舗にものぼり、その”被害者”はのべ411万人を超えることが判明した。食品ジャーナリストの椎名玲さんは、外食産業のメニュー表記が、ずさんであると指摘する。
「スーパーや小売店などはJAS法の管理下にあるため、表示確認は徹底されていますが、外食産業に関しては縛りがないために、表示に関しては、曖昧なままにされてきたのです」
牛肉の偽装について、椎名さんはこう続ける。
「ステーキの場合、表示は強制的なものではなく、外食産業においては”示してくださいね”というお願い程度のレベルです。お店が焼き方を聞いてくれないステーキは成型肉だと思って間違いない。成型肉は中毒の問題があって、中まで加熱しないといけないので”レア”では食べられない。特に、まん丸にそろって提供される牛たんなどは、大体成型肉ですね」
そんな椎名さんが特に悪質な手口だと指摘するのが、高級中華食材であるフカヒレの偽装だ。『ホテル日航姫路』などが、「フカヒレスープ」に「春雨」などで作った人工フカヒレを一部使用していた。
「フカヒレに偽装フカヒレを使うような場合は、本物と偽物で原価が10〜20倍以上違ってきます。偽装の中でも、このケースは非常に悪質だと思います」
『ミシュランガイド関西2014』にも掲載された高級旅館『奈良 万葉若草の宿 三笠』でも、ブランド鶏肉である「大和肉鶏」を使用していると表示しながら、「ブラジル産鶏肉」などを使用していたことが発覚した。消費者問題研究所の垣田達哉代表はこう言う。
「食べることのプロであるミシュランの調査員でも騙されたんですから、素人が表示の偽装を見破るのは無理です。百貨店もブランドですし、和牛もブランド。消費者は、そういうブランドを、もう信用できなくなりましたね」