「日本一、物価が高い都市はどこか?」を毎年、公表する恒例の「平均消費者物価地域差指数」(’13年)がこのほど発表された。これは、総務省が全国の都道府県庁所在地と政令指定都市を合わせた51の都市を対象に、物価水準の差を表したもの。51都市の物価指数の平均を100として、それぞれの都市の物価指数が、平均とどれだけ開きがあるかを調査している。
’13年、もっともその指数が高かったのは、神奈川県横浜市の106.0。今回で、5年連続の「日本一物価が高い都市」となった。一方で、もっとも低かったのは福岡県北九州市の96.6。こちらは3年連続で「日本一物価が安い都市」という結果に。2つの都市の物価指数を比べると、その差はなんと9.4ポイント!モノの値段が1割近く違う、ということになる。
では、なぜ地域によって物価指数に差が出るのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんに分析してもらった。
「ひとえに“賃金の差”だと思います。物価というのは購買力に比例します。横浜や東京は、全国的に見ても賃金が高めの地域。だから売るほうが強気の値段設定でも、モノは売れる。一方、地方都市の場合は値段が高いと誰も買ってくれません。この購買力の差が、数値に結び付いたんだと思います」(荻原さん・以下同)
横浜や東京にはお金持ちが多い。わざわざ値段を下げなくても、売れるというわけだ。
「また、たとえば野菜などは地方のほうが安くなっています。これは、産地に近いということが大きい理由のひとつですね。都会ほど、『新鮮さ』に価値がつかないからです。しかし雑貨や日用品は、産地や鮮度は関係ありません。こういった商品は、むしろ横浜や東京のような都会では、扱う店舗が多く、過当競争になります。ライバル同士が張り合う分、価格破壊も進みます。その結果、地方よりも値段が安いものが出るのです」
一般的に、物価が安いほうが住みやすい、というイメージがあるが、じつは’13年の総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、横浜市は全国7位の「転入超過」数を誇っている。これは、市を出ていく人よりも入ってくる人の数が多いことを意味する。つまり横浜は、日本一物価が高い都市といわれながら、住みたい町としての人気も高い、という側面を併せ持っているのだ。
「横浜と北九州を比較した場合、やはり平均賃金が違います。給料が高くて物価が安ければ、もちろん住みやすい町だと言えますが、北九州が横浜や東京より平均賃金が高いとは思えません。ですから、『物価が安い=住みやすい』とは判断できないですね」