「生涯独身の方や離婚経験者が増え、代々からのお墓を継承する子孫がいないケースが増加しています。また、たとえ子供がいてもお墓の面倒をかけたくないという人も多いですね。それらの不安を生きているうちに解消できる『墓活』が活発化しています」
そう話すのは終活カウンセラー協会代表理事の武藤頼胡さん。最近ではお墓ツアーも大人気で、キャンセル待ちも当たり前だとか。特に注目を集めているのが、墓石を必要とせず、遺骨を自然に還す「自然葬」だ。近年、関心が高まっているものの一つに「海洋散骨」がある。そこで、本誌記者も“終活バスツアー”に参加し、海洋散骨の様子を見学してきた。
このツアーでは、東京湾・羽田空港沖で散骨する。出航から約50分ほどで散骨ポイントへ到着。飛行機の離発着や、頭上を行く飛行機を真上から眺められる。海洋のド真ん中にまくと散骨ポイントがわからなくなってしまうが、空港のように大きな目印のある場所なら、訪れるたびに手を合わせることができる。
散骨する場所は、散骨を請け負う事業者の節度をもったガイドラインにのっとって決められている。「漁船や海上交通の要所を避ける」「目視できない岸から離れた沖合い」などだ。
まず、かごに入った花びらを海へ放つ。色とりどりの花びらが海面に浮かんできれい……。そして、白い袋に入った粉骨を海にまく。体験ツアーでは、骨の代わりに塩を使用。袋(水溶性)のまま、いっきに海へ放り投げてもいいし、少しずつまく、もしくは手に取ってからまく……と、まき方は自由。
その後は海へ献花、黙とう、最後は散骨ポイントを3周し、お別れとなる。まいたのは塩だが、汽笛が鳴ると、しんみりとした心境になってくる。この日、体験ツアーに参加した岩船さん夫婦(79・78)はお孫さんがいないため、将来のことを考えてこのツアーに。
「子供が外国に住んでいるんですが、海は一つだから、散骨だと身近に感じられていいかも。子供と話し合って決めます」
現在の日本で散骨に関する法律はなく、「節度をもって行うかぎりは法的に問題はなし」という見解。ただ、遺骨をそのまま海へまくことはこの“節度”に反するとされ、粉骨(骨をパウダー状にする)をするのがルール。粉骨した遺骨を全部海へまく方法もあれば、一部を散骨、残りを手元供養として残す方法などもある。