「3・11のとき、それまで私たちが住んでいた川崎市でも大規模な停電がありました。電力会社に依存することの怖さと不安を感じましたが、電気そのものは、便利で生活を豊かにするもの。問題は、作り方と使い方なんです!」

 

そう語るのは、自然療法士のサトウチカさん(31)。今年9月、精密機器メーカー勤務の夫、タカヤさん(33)とともに、神奈川県横浜市戸塚区で、太陽光発電で電力を完全自給する、2LDKの「オフグリッド(送電線につながっていない)ハウス」を新築した。新築時から送電線を引かない住宅は異例中の異例だ。

 

耐久性に優れたグレーのガルバリウム鋼板でできた外壁は、モダンな印象。しかし、よく見ると、周囲に網の目のように張り巡らされた電線が、サトウさんの家だけ届いていない。代わりに、屋根の上には太陽光パネルが8枚取り付けられている。

 

「都会のふつうの一軒家で、一般人の私たちが楽しく電力自給ができることを証明したかったんです。爪に火をともすように節電しなくても、オフグリッドで暮らせます」

 

確かに、サトウさんの家には冷蔵庫も洗濯機も、エアコンもある。朝晩、ドライヤーで髪を乾かすし、毎日掃除機も使っている。リビングにはノートパソコンもあるし、ケータイだって使っている。それでも、現在の消費電力は、1日平均3キロワットアワー。一般的な日本の住宅の消費電力の、およそ3分の1程度だ。

 

「特別無理しなくても、節電は可能です。省エネ家電を取り入れつつ、不要な家電は使わない。わが家は原発事故以降、本当の情報を流してくれないことに嫌気がさして、テレビを見るのをやめました。電子レンジも使わず、料理は蒸し器で温め直しています」

 

その他に、サトウさん宅では次のことを心がけているという。

 

【使わないときは給湯器の電源をオフ】【便座ヒーターはコンセントをはずす】【夜早めに寝る】【炊飯器はめったに使わず、土鍋でご飯】【床暖房で冬を乗り切る】

 

極力ムダを省いたうえで、使う電気は自給自足。たとえ雨が1週間降り続いても、大丈夫なんだそう。

 

「雨の日でも多少は発電しますし、雨でパネルがキレイに洗われるので、翌日は発電量も増えるんです!昨日は1日で5.72キロワットアワーの発電がありました。過去最高です」

 

さんさんと輝く太陽の恵みを受けて自宅で電力が作れるとは、聞いているだけで楽しそう。サトウさん夫婦のオフグリッド生活は、新時代の到来を予感させた。

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