宮城県名取市に住む大沼えり子さん(57)は、保護司として少年院仮退院者を支援するだけでなく、ロージーという名で少年院内放送の“ラジオDJ”をしている。
宮城県の録音スタジオで収録される音楽番組『カントリーボーイ』は、月1回60分、東北、北海道の3カ所の少年院内で放送。リスナーは少年院に入院中の少年たちだ。リクエスト曲とともに流れる、えり子さんからの“応援メッセージ”に涙をこぼす少年もいるという。
えり子さんは、25歳で体を壊すまで、東京と仙台を行き来しながらテレビやラジオで活躍するタレントだった。’01年11月、44歳で保護司の委嘱を受けた際、その経歴から院内放送を思いつく。
同年12月、初めて少年院を参観したときのことだ。世間はクリスマスシーズン真っただ中。街中いたるところでイルミネーションが輝いていた。だが院内は平常どおり殺風景。質素で暗い建物で、丸刈りの少年たちが作業着に身を包み、職業訓練を続けていた。
「そのとき出会った少年たちが皆、すごく素朴だったんです。きちんと挨拶するし、私が通りすぎると、気になるらしくチラチラと見ている。その目がなんともかわいくて」(えり子さん・以下同)
えり子さんは、少年たちに、せめてものクリスマスプレゼントをと、院内放送でDJ番組を流した。当初は1回限りの企画だったが、反響が大きく、気つけば13年も続いている。
ちなみに、保護司とは少年院を仮退院、刑務所を仮出所、保護観察に付された対象者らと定期的に面会し、彼らが非行や犯罪から更生し、社会生活を送る手助けをする人のこと。法務大臣から委託された非常勤の一般職国家公務員だが、無給のボランティアだ。
そんな保護司としての顔も持つえり子さんは、7年前、志を共にする仲間たちとNPO法人ロージーベルを設立。4年前に少年院仮退院や、試験・保護観察の際、家族や帰る家など引受け先のない少年たちのための家として「ロージーハウス」を造る。これまで18人が「ロージーハウス」で過ごし、巣立っていった。
「私には誇れる家族や仲間たちがおり、彼らに支えられてこそ今の私があるんです」
「ロージーハウス」開設当初は、周辺住民から反対の声も上がった。「小さい子がいるんだ。非行がうつったらどうする!」といった心ない言葉に傷つきながら、えり子さんは「彼らは危険じゃない!」と、一軒一軒、頭を下げて回った。少年たちも頑張った。挨拶をする。ゴミの日はネットを片づける。近所の清掃をし、雪が降れば、雪かきもした。
孤独を抱えた少年たちと、ゴミを拾いながら、えり子さんは人が支え合って生きる意味を教え、反対していた住民の心も動かしていった。
「たしかに、彼らは法に触れることをした。でも、だからって、見捨てていいんでしょうか。目の前に『助けて』と手を伸ばしている子供がいる限り、私は、その手をしっかりと握ってあげたいんです」
あるときはDJ、あるときは保護司、NPO法人ロージーベルの理事長……。身長155センチ、体重38キロ。きゃしゃなその体で、えり子さんは八面六臂の活躍、日々雄々しくたくましく、生きている。