「塩化アンモニウムのえぐみや苦みが強すぎて廃棄するものだけど、遊び半分でスルメにしてみたよ。食べにくる?」
そう連絡をくれたのは、濱力男さん(70)。ダイオウイカが昨年9月から次々と水揚げされた富山県射水市の新湊漁港。濱さんは、そのうち4匹のダイオウイカを引き取った水産加工会社・浜常食品工業の社長さん。
「ぜひ食べさせてください!」と、記者が射水市内にある同社を訪ねると、ドーンと現れた巨大スルメ!全長約3メートル、最大幅70センチ、重さ6キロ。約10日かけて乾燥させたそう。水揚げされたときは全長約6メートル、重さは130キロもあり、大人の男8人がかりで運んだという“キング”サイズだ。
記者が超巨大スルメに圧倒されていると、濱社長が生のスルメを持ってきてくれた。白くて、ツヤッとしている。『アンモニア臭くて、ツーンとひどい匂いがするに違いない』と、おそるおそる鼻を近づけてみる。『あれ?臭くない!』。イカ独特の匂いがほんのりする程度。
「アンモニア臭くて、ひどい匂いというのは、ダイオウイカが腐って浜辺に上がったときの話だよ。水揚げされた新鮮なものは、ダイオウイカだろうとひどい臭いはないよ」(濱社長)
“ましな匂い”に勇気を得て、ためらいながらも口に入れたとたん「しょ、しょっぱい!」。とにかく塩辛くて、生臭さが残る。試食経験のある社員さんたちも、「ゴムより硬かった」「苦くてしょっぱいよね」と“まずいの嵐”だった。
しかし、どうにかしておいしく食べる方法はないものか?そこで、「何したってまずいよ」と苦笑いする濱社長の隣で、塩抜きされた「試食用炙りスルメ」を、7種類の“ちょい足し”ディップで試してみた(味の評価を☆で表示。最高は5とする)。
【マヨネーズ】☆☆☆
「う〜ん、惜しい。甘味の反動で後からイヤな苦味がより強調されてしまった」
【中濃ソース】☆☆☆☆☆
「まろやかになって、意外にイケる!ソースのうま味と甘味で苦味をカバー!」
【レモン】☆
「さっぱりするはず……と思いきや、えぐみと酸味が強調されて強烈にすっぱい」
【七味】☆☆
「味わいを引き立てる唐辛子が苦味を強調!うーん、本気でまずいです……」
【しょうゆ】☆☆
「えぐみが際立って酸味が鼻につく。そのまま食べたほうがまだマシかな」
【塩麹】☆☆☆
「日本酒のような甘さがビミョーに合う。炙りの香ばしさにマッチしたのかも」
【オリーブオイル】☆☆☆☆
「植物油の青々とした香りが加わって、よりおいしく、食べやすく感じた」
勢いで試食したダイオウイカはひどくしょっぱくて、口内がイガイガする苦味が特徴。それを緩和するには、甘味のある中濃ソースがいちばん!でも、試食後は、とにかくノドが渇いて大変だった。もし、ダイオウイカを食べるチャンスがあったら、中濃ソースと水を忘れずに!