3月8日に逝去された塩月弥栄子さん(享年96)。その著書『冠婚葬祭入門』シリーズは、’70年に初版が刊行され、合計で700万部を超える大ベストセラーに。昭和の時代の「しきたりやお作法のバイブル」は、平成のいまもなお、確実に私たちの「?」に答えてくれる。そのエッセンスを抽出して、お届けしたい。
《祭》とは?
祭は、狩りの獲物が多いことを祈り、豊かな収穫を願う宗教的行事でした。それに、長命、健康を願う要素が加わり、年中行事として定着し、形式だけが残っています。しかし、離ればなれになった家族が集い、あるいは、季節の移り変わりを楽しむ機会として捨てがたいものと思います。
【1】正月の行事は、歳神様を祝うためにある
正月に家々に迎える神様を歳神様といいます。歳神はふつう、年棚とか恵方棚を新しく作っておまつりします。この棚を、しめ縄や白紙で飾り、神前にはお神酒とともに鏡餅をそなえ、さらに昆布、するめ、海老など歳神が好きなものや、おめでたいものをお供えして、感謝の気持ちを表します。
【2】儀礼的なお年玉は、小学生まででよい
本来は神様への供物であり、同時に神様からの贈り物を意味しました。子どもへのお年玉は小学生くらいまででいいでしょう。
【3】雛人形を飾るのは、かなり前からでよいが、かたづけるのは翌日にする
飾りつけは10日前でも20日前でもかまいませんが、かたづけるのはなるべく早くすべきです。昔は早くしないと縁談が遅れるといって4日の早朝にしたものです。
【4】お彼岸には、お墓参りして、霊を供養する
春分の日を中心に、その前後3日ずつ合わせて7日間がお彼岸です。仏教では弥陀(みだ)の国極楽浄土は西方にありとされています。彼岸には太陽が真西に入るので、弥陀の国の方角を正しく衆生に示し、往生の本願をとげさせるため、寺院ではこの時期に彼岸会を営みます。また、信徒はお墓参りをして亡き人の霊を供養し、彼岸へ到達するたよりを得ようと念ずるのです。
【5】賀寿は七十七の「喜寿」から祝うとよい
最近は寿命が伸びてきたので、長寿のお祝いは77歳の「喜寿」からが適当だと思います。88歳が米寿、99歳が白寿です。こういう年にあたるお年寄りがいらしたら、誕生日には子どもや孫が寄り合って、楽しい祝宴を催したりして祝ってあげましょう。
【6】クリスマス・カードは、喪中の人にも送ってよい
年賀状は元旦を過ぎても、正月中に着けば失礼ではありませんが、クリスマス・カードはクリスマスを過ぎたらおかしなものです。早く出す分には、12月早々でもかまいません。また、その年に肉親を亡くした人に出してもさしつかえありません。
【7】門松は一夜飾りをしない
関東の松飾りは、丈の高い竹に松を添え、関西は松の枝、または小さな若松を用います。29日に門松を立てるのは、九松(苦待つ)といってきらいますし、昔から一夜飾りを忌む風習がありますから、28日までに立てます。