夫の愛川欽也さん(享年80)を亡くした、うつみ宮土理(71)。「心に大きな穴がぽっかりあいた」と、5月10日の会見で深い喪失感を語った。

 

「自分にとって、かけがえのない人が亡くなったときに感じる悲しみや絶望などのことを、『グリーフ(悲嘆)』といいます。これは、時間とともに癒されるのが普通と思われがちですが、じつはなかなか、そうはいかないのです」

 

そう語るのは、上智大学「グリーフケア研究所」所長の島薗進特任教授。愛する人を失ったとき、誰もが経験するグリーフに寄り添い、回復を手助けする「グリーフケア」が今、注目を浴びている。その内容について、島薗さんに解説してもらった。

 

「喪失体験は、自分の命の一部がもぎとられたような感覚ともいえます。不眠などの体の不調のほか、精神的ショックから引きこもる人もいます。こうした立場にいる人が、再び、生きる意味を見いだして立ち直ろうとする『グリーフワーク』のお手伝いをするのがグリーフケアです」

 

グリーフは死別だけでなく、離婚や定年など、あらゆる「喪失」によって引き起こされる。グリーフケアでは、まず当事者に過去を振り返ってもらうことから始まる。

 

「もつれた心をほぐし、失った人との関係性を結び直していくのです。少人数のグループになって、お互いの経験について話をしながら、自分の心の壁を自覚してもらうこともあります」

 

事故や災害、身近な人の自殺などを経験した人たちによる「遺族会」も、同じような役割を持つ。共通の痛みを持った人が集まることで、話もしやすくなり、共鳴もしやすくなるのだ。

 

そのためグリーフケアを学ぶ講座には、宗教家や看護師など、他社をケアする立場の人のほか、「自分が経験した悲嘆を生かしたい」という一般人も多いという。しかしながら島薗さんは、他人をケアするうえで大切なことは「他人ができることは、それほど多くないと自覚すること」と話す。

 

「私たちは、相手自身になることはできません。グリーフワークをするのは本人です。その人の近くで、心に寄り添い“待つ”。悲嘆の痛みが癒えていく過程を、ともに体験させてもらえるのは、ケアする人にとっても大きな力になるのです」

 

自分自身でもできるグリーフワークについて、島薗さんに聞いた。

 

「失った人へ、感謝の思いを感じるような思い出し方をしてみましょう。これを私は『いのちの恵み』と言っています。相手への感謝をノートに書いてもいい。いっしょに旅した場所を訪ねてみる、その人が好きだった音楽を聴く、共通の知人に会う……そうしたこともいいですね」

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