「私は生徒に『やればできる』などと言ったことはありません。適性のない人間がいくら野球をやってもプロ野球でホームランは打てない。分相応という言葉があるように、それぞれの個性に合った道に進むべきなのです。しかし今の社会は人生は多様であるということを認めない。なので自分を見失う若者が増えているのです」
そう語るのは、定時制高校の教諭として落ちこぼれた生徒たちを更生させてきた“夜回り先生”こと水谷修さん。1度は挫折を経験した子供が立ち上がって未来をつかむために、親としてできることは何か、教えてもらった。
〈1〉どん底を見せる
「踏みつぶすこと。ここにいては自分はこのままではダメになると心底思わせること。甘やかしてはならない。親は食事くらいは与えても金銭を与えるべきではない。中途半端な援助をせず、どん底をみせる“底つき”を経験させ自立を促すこと。そのためには気休めで褒めたり根拠のない半端な慰めは厳禁」
〈2〉親は子育ての素人だと自覚し他人を頼る
「何人育てていても親はしょせん2〜3人くらい。家庭でできることは知れています。何百何千という子供を見ている専門家の手を借りましょう。回復と称して営利で営業しているところは避けることです」
また、いじめのケースは親が早期にフォローすることが解決を導く鍵に。ひきこもりとは対応が異なる。
〈3〉最善の道は闘うこと
「親がサポートして担任教師や生活指導、場合によっては人権擁護局や教育委員会、暴力があった場合、警察、弁護士を介入させることも。闘わない限り、後々まで心の傷が残ります。しかし悪質な場合は逃げもありです。逃げる=ひきこもるのではなく、転校という手段を取り、学業まで放棄しないこと」
〈4〉外の世界に出す
「小中学校でひどいいじめにあった女子生徒が、日本では希少な職人になって活躍しているケースもあります。過去に絶望せず外の世界で誠実に生きていれば、必ず誰かが認めてくれ引き上げてくれます」
最後に、非行に走った場合、親はどうあるべきか。
〈5〉川の字になって寝る
「子供はほぼ家庭で決まります。子供を人生からドロップアウトさせたくなければ、本当の意味で自主性を重んじて誠意と優しさ、愛を見せること。中途半端な愛情は憎しみよりタチが悪いのです。親子の絆を取り戻すため、子供が帰ってきたら川の字になって眠ることからしてあげてください。愛された人間はものすごく強く、愛を裏切ろうとしませんから」