「好きなようにお金や時間を使える“おひとりさま”の暮らしは、気軽で豊かなように見えるかもしれません。しかし、気を付けなければいけないのが、心や体が弱ったときなのです」
そう語るのは、生活経済ジャーナリストの和泉昭子さん。コミュニティサイト「おひとりさまスマイルcafe」を運営し、自身もシングル生活を送る彼女。たしかにシングルのほうが、質・量ともに豊かな生活を送れることは事実だという。
「住宅金融支援機構の調査によれば、家を購入する際、子供がいる夫婦よりシングル女性のほうが、好条件のものに手を出せることがわかっています。ローンで生活が圧迫されることが少ないので、都心に近い物件などを買いやすいのです」
シングルならば、自分の思い通りにお金を使える。そこはたしかに魅力的だが……。
「それでも『経済的』という意味では、結婚したほうが得であることは間違いありません。最近、おひとりさま向けの食材がスーパーでも売られていますが、食事をするにも、何か買うにしても、単身者は何かと割高です。2人で暮らしていれば、収入は合算できますが、支出が2倍になるわけではないので効率的です。そして何より、失業や病気になって収入が途絶えたりしたときも、パートナーが補うことができるのです」
単身者の場合、もっとも慎重に考えなければならないのは、将来のことだという。
「あるシングルの男性が手術をすることになり、病院側から家族の同意書をもらうよう、求められました。しかし、彼にはサインをする家族がいなくて、困り果てていました。今後、何かあった際の責任問題を考えて、病院で同意書を求められるケースは増えていくでしょう。また家族がいれば気づく認知症なども、1人暮らしでは誰にも気づかれないことも。そこに付け込まれ、高額商品を買わされるような被害に遭うことも多いのです。そんなとき、パートナーや子供の存在の大きさに気づくのです」
そして最後にこう語る。
「医療保険に加入しておくことは当然ですが、いざというとき頼りになるのがキャッシュです。結婚せず、子育てにお金を使わなかった分、親の介護費用、さらには自分が高齢になったときの備えは必ずしておくこと。病気で介護が必要になった場合に備えて、結婚している人より1.2〜1.5倍と多めに貯蓄をしなければなりません。そのうえでシングルは、リスクをすべて受け止める精神的な覚悟も必要なのです」