「マイナンバーカードは2種類。紙製の『通知カード』と、自分から申請して受け取るプラスチック製の『個人番号カード』。今回、住民票のある市区町村から世帯主宛に発送されるのは『通知カード』。早くて10月中旬、遅くても11月末までに届くはずです」
そう話すのは、『マイナンバー制度 番号管理から住民を守る』(自治体研究社刊)の著者・白石孝さん(プライバシー・アクション代表)
まだその中身をよく知らない人も多いだろうが、マイナンバーとは「国民共通番号」のこと。来年以降、社会保険料や税申告に使用され、赤ちゃんからお年寄りまで住民票のある人すべてに番号が割り振られる。番号はランダムな12桁。親子、夫婦でも全く関連がない数字になる。
「今回届く『通知カード』には番号と基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)と、『個人番号カード』の申請書がセットになった薄緑色の紙の用紙。上の通知カード部分だけを切り取って使うようになります」(白石さん)
ほとんど国民にその全容を知らされないままにスタートしようとしているマイナンバー制度だが、じつは信じられないほど多くのリスクを抱えている。いったいどんな危険があるのか?白石さんに解説してもらった。
【リスク1】「通知カード」が届かない
「10月中旬から簡易書留で発送される『通知カード』は5千500万通。これだけの簡易書留が発送されるのは初めてで、正確に届くか心配。また、住民票と別の場所に住んでいたり、DVで身を隠している人などには届きません。その数は東京都新宿区などで20%、住民全体の5%と試算されています」
【リスク2】「通知カード」が盗まれて偽造される
あなたが「まだ来ないな」と思っているうちに誤配達などによって盗まれている可能性が。他人が「通知カード」の申請書を使って『個人番号カード』を偽造し悪用。これが今、いちばんのリスクだ。
「『通知カード』は番号と住所、氏名などが書かれているだけで、それ自体にあまり大きなリスクはありません。しかし申請して作る『個人番号カード』は顔写真付きでICチップ内蔵。運転免許証と同じ身分証明書になるんです」
【リスク3】「あなたのマイナンバー教えて」詐欺頻発
「今後5年をめどに、マイナンバーはクレジットカードや銀行口座など、直接お金と関わる分野との一体化が進められます。このときになると、個人の“番号意識”も高くなり、簡単に漏えいしにくくなる。マイナンバー情報を悪用しようと考える人間は、世の中の人の意識が低い今のうちに多くの番号を集めて、4〜5年後に活用しようと考えているはず」
【リスク4】勤め先からの個人番号が流出する
’16年1月からは、マイナンバーは納税事務に運用される。企業は社員全員と扶養家族の番号を集める義務が。
「マイナンバーを企業が流出させた場合、刑罰がありますが、マイナンバー担当社員が借金などを抱えていて、お金のために流出させる危険はどの企業にもある。もし流出した場合、マイナンバーは一生涯不変が原則ですから、常になりすましや詐欺におびえて暮らさなければなりません」
【リスク5】ある日、突然、自分の預貯金が何者かに引き出され、ゼロになる
マイナンバーが銀行口座とつながると、ハッカーに銀行口座が乗っ取られてしまう危険性も大きくなる。
「ウイルスによる遠隔操作によって、知らないうちに自分のパソコンが乗っ取られたケースがすでに起きています。マイナンバーから銀行口座をたどられ、気が付いたら、銀行の預貯金を全部引き出されていたという被害も起きるのではと心配です」
なんともおそろしい話だが、こうしたリスクから、身を守るにはどうしたらいいか?白石さんはこう警告する。
「現状『通知カード』があれば不都合はありません。『個人番号カード』を申請しないことが最大のリスク回避です」