混迷を極める山口組と神戸山口組の対立。その最前線で戦うのは「マル暴刑事」といわれる暴力団担当の刑事たちだ。彼らはどのように捜査しているのか?その実態は?マル暴刑事と組関係者が明かす!
「警視庁には4万3000人の警察官がいるが、マル暴刑事は本部と警察署合わせて約1000人だ」
こう話すのは警視庁のマル暴刑事の警部。マル暴刑事とは、「警視庁の場合は組織犯罪対策第三課(210人)と第四課(220人)の刑事。そして各警察署の暴力団捜査を担当する刑事を指す」という。各都道府県警で名称や組織に違いはあり、たとえば大阪府警本部では組織犯罪対策本部と、刑事部の捜査第四課にマル暴刑事がいる。
「警視庁の割合を目安とするなら、全国に約25万人の警察官がいるので、6000人くらいになるのではないか」(前同)
マル暴刑事といえば、映画などではヤクザ顔負けの強面が配役されるものだが、実際の姿、服装は違うという。
「ヤクザのような格好をした刑事は今は少ない。私のように普通のスーツのサラリーマン風が主流。スキンヘッドにダブルのスーツ姿の人間もいるが、無理して自分を大きく見せたがる面があり、使えないのが多い」(前同)
職務の特性上、マル暴刑事は暴力団と深くつき合う。その狙いは何なのか?
「暴力団内部の情報を取るには組員との信頼関係を築く必要がある。カラオケボックスで一対一で会うこともある。謝礼を払うことはないが、基本的に経費が自腹だ」(前同)
一方、ヤクザ側にもマル暴刑事とつき合うメリットが存在する。組関係者が言う。
「俺に切符(逮捕状)が出たとき、知り合いの刑事に『身辺整理のために、2カ月待ってくれないか。そしたら出頭する』と頼んだ。結局その刑事は待ってくれた。彼とはもう25年のつき合い。組の舞簿とか全部あげているよ」
なかには損得を超えた友情のようなものが芽生える例も。
「留置所で仲よくなった留置担当の警察官がその後、マル暴刑事になり、彼と手紙のやり取りをするようになった。俺が刑務所に入ると誕生日にわざわざ面会に来てくれて、高級な下着を差し入れたりしてくれた。彼とは家族ぐるみの関係が続いている。彼の結婚式にも出席したほどだ」(暴力団幹部)
だが、そうした密接な関係も、1991年の暴力団対策法、さらに2000年代に入り各都道府県で施行された暴力団排除条例の影響で変わりつつある。警視庁担当記者は次のように語る。
「以前ならタクシーがつかまらないときなど携帯で組員に車を回すように、顎で使っていた刑事もいたが、今ではこんなことは一発でアウト。組幹部や組員とズブズブの関係を築いて情報を取るという手法で暴力団を捜査してきた刑事たちは、この1、2年で完全に姿を消し、ますます暴力団の捜査はやりにくくなるだろう」
(FLASH 2015年12月15日号)