今世紀の朝ドラで最高の平均視聴率(23.5%)を記録し、大好評のうちに幕を閉じた『あさが来た』。そのヒロイン白岡あさは、江戸末期から明治の激動の時代を生きた女性実業家。そして現在放送中の『とと姉ちゃん』も、女性のための『あなたの暮し』を創刊する女性編集者・小橋常子を描き、全話が視聴率20%を超す好調ぶり−−。
そう、今“働く女”を描くドラマが熱く支持されている。
「先行き不安のある現代、“女性も働かざるをえない”状況にあるという現実も関係していると思います」と、分析するのはドラマウオッチャーの田幸和歌子さん。実際、現在の働く人口の約43%は女性が占めている(厚生労働省。’15年10月調べ)。
そんな中、この夏は“働く女”をテーマにしたドラマがズラリとそろった。その職業もさまざまだ。
『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(関西テレビ系・火曜22時〜)で驚異的な記憶力を武器に猟奇犯罪に挑むのは女性新米刑事。演じるのは『あさが来た』の波瑠。
「あさ役の波瑠さんはかわいかったですが、もともとは少し陰のあるクールな役が似合うので、七味唐辛子好きというちょっと“変人”の刑事役にも期待ができますね」(田幸さん)
ほかにも、『家売るオンナ』(日本テレビ系・水曜22時〜)で北川景子が演じるのは不動産会社のスーパー営業ウーマン。『グ・ラ・メ!〜総理の料理番〜』(テレビ朝日系・金曜23時15分〜)の剛力彩芽は官邸料理人、『せいせいするほど、愛してる』(TBS系・火曜22時〜)の武井咲はジュエリーブランドの広報と、さまざまな分野で“働く女”が夏ドラマでは描かれている。
中でも一番の見どころは、「復職ドラマ」だと田幸さん。
「『寿退社でハッピーエンド』という幻想はもはやありません。現実社会にも結婚・出産後、育児をしながら仕事に生きがいを見いだす女性は増えていますよね。職場復帰する女性は今の時代の象徴。だからこそドラマになるのです」
育児休暇から復帰し、営業部長として働く女性を描く『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系・木曜22時〜)はまさにそんなドラマ。ヒロインを演じるのは、3年ぶりに連続ドラマの主演に“復職”する松嶋菜々子だ。
「最初に彼女が抜擢された朝ドラ『ひまわり』では弁護士役。その後、『GTO』『魔女の条件』で教師役を演じますが、このころはまっすぐで明るく、かわいらしくてちょっとドジな“きれいなお姉さん”的魅力でした。それが、『やまとなでしこ』『救命病棟24時』シリーズに登場し、『家政婦のミタ』で家庭で傷つき心をなくした女性を演じていくうちに、彼女自身も結婚・出産を経験し、いい意味での女のしたたかな強さが加わってきました。彼女が演じる女性は、その時代時代の、女性の心に寄り添う“働くヒロイン”。今度のドラマも、復帰しても希望の部署ではなく、イチからやり直しという設定。そんな困難にどう立ち向かっていくかが見ものだと思います」
時代を映す鏡ともいえる“働く女”たち。そのドラマにうなずいたり涙したりしているうちに、思わず引き込まれてしまうこと必至の作品が、この夏はめじろ押しだ。