「放射性物質に汚染された木材チップが、これだけ無防備に8カ月間も放置されたままです。万が一、誰かの手によって火でも付けられたら、放射性セシウムの数値は数万、数十万ベクレルとなる可能性があり、琵琶湖はもとより、周辺地域一帯がかなり危険な状態にさらされます」(市民団体『見張り番』滋賀代表の澤忠起さん・74)
“関西の水がめ”琵琶湖畔で、いまとんでもない問題が起きている。琵琶湖に注ぐ滋賀県高島市の鴨川河川敷に、幅3.5メートル、長さ570メートルにわたって、放射性セシウムなどが含まれた木材チップが大量に放置されているのだ。さらに琵琶湖に近い河口付近には、木材チップが入った土のうが77袋も不法に投棄されたままの状態で放置されている。
河川を管理する県の調査では、木材チップの総量は200~300トン。最大で1キロ当たり3千ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表。国の放射性廃棄物処理基準(1キロ当たり8千ベクレル)以下なので、「健康への影響はほぼない」と、県は説明した。
しかし、京都のNPO法人『市民環境研究所』が行った測定では、1万2千ベクレルの放射性セシウムが検出されている。県が公表した濃度の4倍の数値に、河川周辺の住民は恐怖におびている。
県の関係者によると、この木材チップは、福島第一原発事故で汚染された樹木の一部。線量を下げる作業を東京電力から受注していた、福島県内の製材業者から運び出されたものだという。現在、滋賀県は河川敷入口の門扉前に立入り禁止の看板を立て、ロープの柵を設置しているが、誰でも簡単に入れるほど現地の管理体制は甘い。
不法投棄されてから8カ月、雨や台風によって、どれだけの放射性物質が土壌に染み込んだか。地下水脈を通じて、すぐ脇を流れる鴨川、琵琶湖へと流れ込んでいても何ら不思議でない状況なのである。
「高島市内の各地点で放射線量を計測した場合、通常、高くても0.1マイクロシーベルト。今回はじめて現場で測定しましたが、明らかに異常です。木材チップが入った土のうを直接測ったら、毎時0.952マイクロシーベルト。ほぼ1に近いので、警戒本部を立ち上げないといけないぐらいの数値です。これらは廃棄物の不法投棄にもなると思いますので、県の管理者としての責任は重い」(高島市総合防災局の担当者)
周辺住民、そして琵琶湖も危険にさらされているにもかかわらず、県はなぜ放置したまま、早急に撤去しないのか。滋賀県の知事といえば“卒原発”を掲げる嘉田由紀子氏。知事は本誌の取材に対してこう回答した。
「住民の皆さんの不安を一日も早く取り除くことが私の責任であると考えています。(不法投棄)行為者や木材チップの排出元らに対し、撤去是正を求め、刑事責任も含め厳しく責任を追求していくとともに、行政代執行による対応など、あらゆる手段を用いて最善を尽くしてまいります」