東京都健康安全研究センターでは、新宿区百人町にある観測施設で、’11年3月以降毎月、1平方メートル当たりにどれだけのセシウム134とセシウム137が降ったかを測定、公表してきた。
’11年3月、福島第1原発事故直後には8000ベクレル以上のセシウム134、137が降下。以後減り続け、現在通常の月はセシウム137で1〜2ベクレル程度。しかし3月になると’12年は18、’13年には42ベクレルにまで跳ね上がっているという。
「昨年3月10日に首都圏で空が真っ黄色になる煙霧が発生しました。このことからもわかるように3月は雪解け後で地面が乾燥し、地表の土ぼこりが舞い上がる時期。福島原発事故で飛来した大量の放射能性セシウムは地中には染み込まず、ほこりに付着して地表に残っています。とくに栃木県、群馬県の山間部には多くセシウムが降りました。それらが一斉に舞い上がって都内に降ってくる。今年も要警戒です」
こう語るのは『放射能下の日本で暮らすには?』(筑摩書房刊)の著者で作家の田中優さん。その危険度について田中さんはこう警告する。
「人間が体内に入れる空気の量は飲食の5.5倍です。セシウムを体内に取り込む危険性では呼吸がいちばん怖い。肺に取り込まれたセシウムは血液を介して心臓に蓄積することがわかってきました。人間は1日22立方メートルの空気を吸います。月40ベクレルというのは、セシウムが心臓に達して心電図に影響をあたえるレベル。危ない数値です。今年も煙霧が発生した場合、その日は外出を控えたほうがいいと思います」
ただ、空気中のセシウムはほこりに付着しているので、花粉症のマスクで防ぐことができるそうだ。だが、セシウムが付着したほこりは花粉と同じで、靴の裏やコートなどに付いて、家庭内に入り込む。
「背の低い子どもやハイハイをする赤ちゃんほど、外から持ち込まれて、床にたまったセシウムを吸い込みやすい。煙霧の日などは靴を玄関の外で脱ぐなどの対策も必要でしょう」
丸3年たった今も、福島原発事故で飛来したセシウムは、首都圏に振り続けている。そのことを忘れてはならない。