「このままでは、2030年代には年金の積立金は枯渇してしまいます。早晩、年金に対する大改革が必要となりますが、そうなれば白羽の矢が立つのが支給開始年齢の引き上げです。ゆくゆくは、75歳までの引き上げの可能性もあります」

 

そう警鐘を鳴らすのは学習院大学経済学部の鈴木亘教授だ。すでに今年度から、厚生年金の支給開始年齢の引き上げが始まっている。’25年までの間、3年に1歳ずつ引き上げられ、最終的に65歳まで引き上げられる予定だ。

 

「アベノミクスで目指すインフレ率2%が達成されれば、’15年から給与カットがはじまり、毎年1%ずつ給与額が減額されていきます。しかしそれでは積立金の枯渇に間に合わない。となると、残された手としては、支給年齢の引き上げしかないわけです」(鈴木先生)

 

支給開始年齢がこれだけ違えば、生涯で受け取る年金の額も、大幅に変わってくるはずだ。鈴木先生の話では、50代なら65歳から、40代なら68歳から、30代なら70歳からの支給が目安となる。そのうえ、特定社会保険労務士の長沢有紀先生は言う。

 

「年金の支給年齢引き下げに対応して、政府は今年度から企業に65歳までの雇用を義務づけました。しかし実際には、今までと同じ条件で定年の延長をしている会社はほとんどありません。年金が出ない分、雇用でカバーできると思ったら、大間違いです」

 

ほとんどの企業は今、いかに高齢者の人件費を抑えるかで頭を悩ませているという。さらに、長沢先生は会社員の専業主婦の妻が恩恵を得ている「第3号被保険者制度」の見直しが検討されていることを指摘した。

 

「第3号被保険者でいるうちは、保険を収めることなく将来の年金を受給できます。これがなくなれば、妻も自分で国民保険を納付しなければならない。そうなると、働かないわけにはいかなくなるでしょう」

 

50代は60歳から65歳の5年間を逃げ切ればなんとかめどはつくだろうが、問題は30代、40代だと長沢先生は指摘する。

 

「特に30代で専業主婦なんてとんでもない。今すぐ正社員の職を探してください。40代は正社員が難しければ、60歳を過ぎても働けるようなパート職を今すぐにでも探しましょう。併せて、資産運用や貯蓄でのカバーも必須です」

 

仕事、貯蓄、あらゆる手を駆使して、低年金時代を乗り切っていくすべを身につけよう。

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