現役時代に決して怠けていたわけではない。なのに、年金生活に入っていつの間にか貧困に。悠々自適は望むべくもないが“人並み”のささやかな暮らしからもこぼれてしまうなんてーー。いったいなぜ?老後破産の背景にはさまざまな問題が横たわっている。

 

老後破産の主たる原因の一つが、子どものためという大義名分のもと、膨れ上がる教育費。「子どもにかけるお金を考える会」などを主宰するファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは、次のように解説する。

 

「教育について無計画だとすぐに老後破産につながります。特に年収700万〜800万円くらいのご家庭は、住宅ローンを抱え、私立に通わせることもなんとか可能で、もっとも家計が膨らみがちな世帯です」

 

まず注意するべきは、小学校4年生の塾選びの段階だ。

 

「ここで12年降りられない船に乗るようなもの。中学から私立か公立を選ぶかで、かかる教育費は700万円くらいの差が出ます。家計の状況を見極めて、慎重に選択することが分かれ道となります」

 

教育資金と老後資金は綱引きの関係である、と畠中さんは捉える。

 

「綱の長さは限られているのに、教育のほうにばかり引き寄せすぎてしまうとどうなるでしょう。子どもが全員大学を卒業した時点で、貯金が数十万円しか残っていないご家庭は珍しくありません。かつて退職金がまとまって出た時代なら、老後資金に回せたかもしれない。けれどそれが期待できないいま、教育費の綱を引きすぎることで、老後破産への道を突き進むことになってしまいます」

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