「『投資を始めるならNISA(少額投資非課税制度)』という宣伝をよく見ます。通常なら運用で出た利益や配当金には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座なら非課税です。メリットが大きいのは事実です。ですがNISA口座は、メリットばかりが強調され、デメリットを把握している方が少ないようです。メリットもデメリットも両方きちんと理解して、選ぶことが大切です」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。「初心者におすすめ」と評判のNISA。だが、NISAには思わぬ落とし穴があるという。荻原さんが指摘するデメリットはおもに3つ。いずれも損をしたときのリスクだ。そんな、3つの落とし穴を荻原さんが解説してくれた。
【1】損をしている価格が、購入価格になる
「NISA口座は投資商品を5年間置けますが、5年後には一般の口座に移さねばなりません(一回のみ、再預入可能)。NISA口座で買った100万円の株が5年後、50万円に値を下げていたとします。このときNISA口座から一般の口座に移すと、株の取得価格は50万円とみなされます。その後、株価が100万円まで戻り売却すると50万円の利益が出たことになり、税金が10万1千575円かかります。はじめから一般の口座であれば、100万円で買った株を100万円で売却すれば利益はゼロになり、そこに税金もかかりません」
【2】ほかの口座と損益通算ができない
「投資は通常、損失と利益を相殺して課税されますが、NISA口座は相殺できません。たとえば、NISA口座で100万円の株が80万円に値下がりし、売却。一般の口座にある別の100万円の株が120万円になりこちらも売却したとします。NISA口座は損益通算できないので、一般口座の利益20万円に税金が4万630円かかります。両方とも一般の口座なら、利益20万円と損失20万円が相殺され税金はかかりません」
【3】損の繰り越しができない
「一般の口座なら、損は繰り越せます。たとえば今年50万円の損を出し翌年20万円の利益が出ても、前年の損と相殺されて税金はかかりません。損は3年間繰り越せるので、2年目に10万円、3年目に20万円利益が出ても税金はかかりませんが、NISA口座にはこの制度はありません」
NISA口座は、利益が出たときのメリットは大きいものの、損したときの補償がない。NISAを始めるときには、くれぐれもご注意を。