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最近、ニュースでよく耳にする「軽減税率」。軽減税率とは、一部商品の消費税を低く抑える税制で、政府は’17年4月に予定される消費税の10%への引き上げと同時に、食料品などは8%に据え置くよう検討している。経済ジャーナリストの荻原博子さんは次のように話す。

 

「一見、生活への配慮が感じられますが、本当に国民思いの施策なのでしょうか。今の議論を整理しながら、考えてみたいと思います。まず、軽減税率の導入に伴う課題はおもに2つあります。1つ目は方法です。9月には、財務省から提案されたマイナンバーを活用する方法が、議論を呼びました」

 

その方法とは、買い物の際は、消費税を一律10%として支払う。そのとき、マイナンバーカードを提示すると、消費税の軽減税率による差額が記録される。差額分は1年分まとめて還付、つまり返金されるというものだった。

 

「還付には申告が必要なことや、子どもが買い物するにもマイナンバーカードを携帯させるのかなど反対意見が噴出し、この案は見送られました」

 

ほかにも経理の方法を見直すなど、さまざまな案が検討されているが、打開策は見つかっていない。

 

「2つ目は、軽減されるものとされないものの線引きです。現在、3通りの線引きが検討されています。それは『酒類を除く飲食料品』、あるいは『生鮮食品』、『精米』に限って軽減するというものです。たとえば、『生鮮食品』に限って軽減するとします。当然、マグロの刺身単品盛りは軽減されますが、食品表示法で加工品に分類される刺身の盛り合わせは軽減されません。このように複雑な線引きによって店頭での混乱や、軽減枠に入りたい業者の攻防、税金を減らしたくない政府の思惑などが混然となり、なかなか結論がでません」

 

こうした軽減税率の議論は、今に始まったことではないと荻原さんは言う。

 

「消費税が導入された’89年ごろ、25年以上も前から、検討されるたびに結論が出ず先送りされることを繰り返してきたのです。政府が早い段階から、長期計画で制度設計に取り組んでいれば、すでに軽減税率が導入されていたでしょう。政府のやる気が疑われても仕方がないと思います」

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