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「安倍内閣が目標として掲げる『介護離職ゼロ』。年間約10万人が介護を理由に離職し(’13年・総務省)、介護施設の不足や介護職員の待遇改善など、課題は山積みです。なかでも、仕事と介護の両立に必要な『介護休業』。取得推進のための法改正が進んできました」

 

そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。介護休業とは、常時介護が必要な人を2週間以上介護するための、最長93日間の長期休暇だ。雇う側は法律上、介護休業の申し出を断ることはできないが、給料は支払われない。介護休業中、無収入では困るので、雇用保険の加入者には介護休業給付金が支給される。

 

「1つ目の改正点は、この給付金が給料の40%から、今年8月以降は67%に引き上げられることです。2つ目は、介護休業の分割取得が可能になる点です。介護休業は、要介護度が上がるなど介護の状態が変わらない限り、取得は1回きりでした。ですが来年1月からは、最長93日間を3回まで分割して取得できるようになります」

 

ここまでが3月に決まった内容だが、今月8日、追加の施策が明らかになった。そもそも介護休業は、要介護度の条件が「2〜3程度」とあいまいだった。そこで来年1月からは、要介護2以上は取得可能と明記。

 

「要介護1でも介助の要件を満たせば、たとえ外出するとひとりでは帰宅できない認知症のケースなども、取得可能になります。これが3つ目の改正です。今年4月末時点で、介護認定を受けている方は全国で約622万人。そのうち、要介護1がもっとも多く約122万人です(厚生労働省)。要介護1の介護者が全員、対象になるわけではありませんが、確実に、対象者は増えるでしょう」

 

さらにこれまでは、介護を受ける人が配偶者、親、配偶者の親、同居の祖父母に限られていたが、来年1月以降は、同居という条件がはずれる。

 

「つまり、離れて暮らす孫が、祖父母を介護するために介護休業が取得できる、これが4つ目の改正です。介護の負担を主婦が抱え込まず、家族が順番に介護休業を取得し分担すれば、介護が少し楽になるかもしれません。また介護休業とは別に、単発の『介護休暇』も年5日間、来年1月からは半日単位で取得できると法改正されました。ケアマネージャーとの相談などに使いやすくなるでしょう」

 

これらの改正で介護休業の対象は広がり、使い勝手もよくなるはず。

 

「しかし問題は、介護をおもに担う40〜50代の中堅社員が、介護休業を取りづらい環境です。加えて、介護休業は1年以上雇用されているパート社員も取得できます。ただ実際には、パート社員が長期休暇を申し出ることは難しいでしょう。申し出ても、遠回しに肩たたきに遭うだけだと、誰もがわかっているからです。これらは働いている人のうち、介護休業の取得者が3.2%という取得率の低さに表れています(’13年・総務省)。政府には法整備で満足することなく、取得しやすい環境づくりに知恵を絞っていただきたい。普及啓発や、数値目標の設定など雇う側に働きかけ、尽力してほしいものです」

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