「先月末、三菱UFJ銀行が銀行員のいる窓口を持つ店舗を’23年までに半減させると、日本経済新聞が報じました。現在は、全国に約515店ありますが、当初3年間で約430店に減らし、最終的には約250店にするといいます。最近、銀行の収益悪化はよく聞きます。とはいえ、これほど大規模な店舗削減に、『銀行がなくなる』と衝撃を受けた方もいるかもしれません。ですが、結論から言うと、銀行はなくなりません。ただ、今の業態からシフトチェンジし、大きく変わっていくのは間違いありません」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。従来、銀行といえば、都心の一等地に店舗を構え、人件費の高そうな人材がたくさん働く場所だった。
「よく『収支が1円でも合わないと、何時間でも残業させる』といわれたものです。これは、銀行の正確性や真面目さを表す美談と受け止められていました。しかし今思うと、何十人もの銀行員に残業代を払って1円を追うなんて、コスト意識の欠落と言っても過言ではありません。銀行は非効率な運営が続いていたのです」(荻原さん・以下同)
当時は、旧大蔵省が強い行政指導を行い、金融業界を統制していた。自由競争がほぼない代わりに、倒産もなく安定していたのだ。
「ですが、’96年ごろからの『金融ビッグバン』によって、銀行独自の金利設定が可能になるなど、銀行間の競争が勃発。’97年、北海道拓殖銀行の破たんを皮切りに、銀行も倒産する時代に入りました」
それから銀行は不良債権を処理し、自らの採算を考え、今後は、冒頭のシフトチェンジを本格化させていく。
「店舗を減らすとともに、銀行員のリストラも進むでしょう。みずほ銀行は1万9,000人、三菱UFJ銀行は9,500人、三井住友銀行が4,000人のリストラを発表しています。銀行は『銀行法』で公益性が高いとされているため、表向きは『ようこそ、お客様』とほほえみますが、本音では『一般顧客にはあまり来てほしくない』と考えています」
これからは、「富裕層をおもな顧客として、財産管理や資産運用など高収益の相談業務を中心に据えるでしょう」と荻原さん。
「一般顧客相手の預金や振り込みなど、従来の銀行業務は、IT技術の応用で人の手を介さないシステムに変えていくのです。こうした銀行の変化を見据え、私たちも銀行との付き合い方を変えていかねばなりません。今の時代、IT技術があふれていますから、もう苦手なんて言っていられません。インターネットバンキングの導入は必須だと思います」