1月24日、父親の栗原勇一郎容疑者(41)による虐待で命を奪われた千葉県野田市の小学4年生の心愛ちゃん(10)。発見されたとき、体には複数のアザがあり、胃にほとんど内容物がなかったという。2月4日には、夫の暴行を幇助していた疑いで、母親のなぎさ容疑者(31)も逮捕された。
虐待を繰り返してきた勇一郎容疑者とはどんな人物なのだろうか? 千葉県野田市にある勇一郎容疑者の実家近くの住民はこう話す。
「30年以上前、勇一郎君が小学1年生のときに、この住宅地に引っ越してきました。両親と2学年下の妹がいる4人家族。みんなハキハキと明るい一家という印象です」
地元中学を卒業後、現在では進学校として知られる埼玉県内の私立高校の「英語クラス」に進学した。中学・高校の同級生が語る。
「勉強はあまりできませんでしたが、ひょうきんで明るくて、人気のあったヤツだと記憶していました。でも、事件後に同級生の間でメールのやりとりがあり、『気が弱い生徒を率先していじっていた』とか『妹をひどくいじめていた』という話を聞き、そんな一面もあったことを初めて知りました」
さわやかな笑顔の裏に隠されたもうひとつの顔。それは大人になっても変わらなかったようだ。心愛ちゃんが亡くなったマンションの住民はその印象を次のように語る。
「父親は、廊下などですれ違うとき、柔和そうな笑顔を見せて挨拶してきて、虐待をするような人間には見えませんでした。昨年12月には『このマンションの冬は寒いですよね』と笑いながら挨拶してきたんです。そんな彼が、冷たい風呂場で心愛ちゃんに水をかけていたかと思うと……」
一方、なぎさ容疑者は夫の虐待に加担。体のアザから虐待が発覚することを恐れた夫の命令で、事件の1カ月前から、監視するなどして、心愛ちゃんを家の外に出さなくなった。虐待心理研究所の岡田ユキさんがこう分析する。
「日常的な夫からの暴力によって、妻が支配されることは珍しいケースではありません。力や恐怖で押さえつける夫婦関係であれば、夫に従うことが当たり前になり、疑問を感じなくなります。しかも、最初に妻が暴力を受けて、ほこ先が子どもに向けられた場合、少なくとも子どもが殴られているときは“自分は安心”と考えてしまうこともあるのです」
栗原夫妻について、前出のマンションの住人が語る。
「父親は身長180センチほどですが威圧感があるというタイプではありません。母親は150センチぐらいと小柄で、いつも赤ちゃんを抱っこしていました。夫婦は、会えば、いつもおだやかな笑みを見せます。でも、事件の1週間前、買い物から帰ってきた夫婦と出くわしたときに、私がマンションのドアを開けて入れてあげたんですが、2人とも恐ろしい顔をしながら無言で通り過ぎていきました。これまでと違う夫婦の表情に、こんな一面があるのかと驚いたんです」
事件現場となった自宅マンション前には現在、多くの花とお菓子が供えられていた。