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「与党が消費税10%の増税を掲げる一方、それに野党はオール反対とわかりやすい選挙でした……。この選挙結果は、格差が急激に拡大する最悪のシナリオの序章になるかもしれません」

 

こう語るのは、経済アナリストで獨協大学経済学部教授の森永卓郎さんだ。7月21日に投開票が行われた参議院選挙で与党が多数を占めた。これにより10月から消費税は8%から10%に引き上げられることがほぼ確実となった。

 

「安倍晋三首相は選挙中もアベノミクスによる経済成長の実績を強調していましたが、その実態は、格差を拡大させただけです」

 

そう語るのは、立命館大学経済学部教授の松尾匡さん。社会保障や介護・教育分野などに大胆に政府支出を求める「反緊縮」を唱えてきた松尾さんが、こう続ける。

 

「安倍政権になってから“世界でいちばん企業が活躍しやすい国”とのスローガンを掲げ、大企業に有利な政策を始めました。’90年代には5割だった法人税の税率が、’18年には3割を切るまで引き下げられました。所得税においても富裕層に対する優遇措置をおこない。’70年代に75%だった最高所得税率は、安倍政権になって45%になっています。その一方、5割を超える人が“生活が苦しい”と答えています。アベノミクスが、富裕層と庶民の格差を大きくさせてきたのは明らか。しかも、参院選の結果を受けて、これまでの政策はこれからも続くでしょう」

 

安倍政権の政策が景気を回復させるのならいいのだが、すでに景気悪化の兆候が出てきている。今年に入って、アベノミクスの成果といわれてきた「新規求人数」が減少。松尾さんがこう指摘する。

 

「下落しているのは新規求人数だけではありません。’18年11月ごろからあらゆる経済指標からみても景気が後退しています。とりわけ消費意欲を示す『消費者態度指数』が9カ月連続で下落しているのが気がかりです。購買意欲が冷えているうえに、消費税の増税が追い打ちをかけることで、ますます格差が広がってしまうのです」

 

元・神戸大学大学院教授で「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫さんもこう語る。

 

「所得の低い人ほど負担が重くなる消費税は、税にとって最も大切な原則である、所得に応じて税を負担する『応能負担』に反する不公平税制です。増税後は消費が落ち込み、物価が下落し、企業業績も悪化。社員の賃金が減らされるため、さらに消費が冷え込む“デフレ・スパイラル”に陥ります。そのしわ寄せは庶民にいくのです」

 

松尾さんもこう語る。

 

「海外の状況も悪化しています。米中貿易戦争に、イラン情勢による原油高の懸念、泥沼化する日韓関係など、世界経済が不透明なとき。これまで日本経済を支えてきた外需に期待できません。そんな状況での増税は、風邪のひきはじめに冷水に飛び込むようなもの。とくに体力の弱い商店、中小企業は、消費税が上がっても価格に転嫁できません。自腹を切るしかなくなり経営が悪化。倒産したり廃業したりするケースも増加します。それにともない、職を失う人も増えていくでしょう」

 

今後、所得がどれだけ下落するのか山家さんに予想してもらった。

 

「厚生労働省の『国民生活基礎調査』の世帯所得のなかでも、より実態に近い中央値を見ると、第2次安倍政権が発足してから9万円も減っているのです。これに消費増税が追い打ちをかけると、最悪のケースで世帯所得は100万円も下落してもおかしくありません。中央値とは、全体のちょうど真ん中の値。つまり半数の世帯が年収320万円以下になってしまうのです。所得が下がる世帯が多いにもかかわらず、自民党の公約を見ても格差対策と言えるものはほとんどありません」

 

与党の勝利で、引き続き推し進められるアベノミクス。不況に入りつつあるいま、広がり続ける格差はどうなるのか。

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