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「従来の“慣行”として、長年行われてきています。私どもが野党だった時の政権(鳩山政権)もこうしたことを行ってきています。それはやはり“慣行”だったんだろうというふうに思います」

 

11月13日、『桜を見る会』の中止を伝える会見でそう語った菅義偉内閣官房長官(70)。税金を使って行われる内閣総理大臣主催の『桜を見る会』に、与党の後援会関係者を多数招待していた問題。多くの批判を受けて、政府は来年度の会を中止することを決定したが、それを伝える会見で菅氏が何度も使ったのが「慣行」という言葉だった。

 

会見でこの問題について語ったのは、記者との質疑応答を含んで18分弱。その間、菅氏は7回も「慣行」という言葉を繰り返した。他にも「慣例」や「長年」といった言葉、さらには「いままでずっとそういう形」などの表現を多用。『桜を見る会』への後援会関係者の招待は、現政権だけではなく、過去の政権でも行われていたことを強調した形だ。

 

だが、具体的にどこからどこまでが「慣行」だったのかは、菅氏は明らかにはしていない。ここ20年、自民党以外の政権下で『桜を見る会』が行われたのは’10年の鳩山政権のときだけ。民主党時代の’11年と’12年は、東日本大震災と北朝鮮のミサイル問題を理由に、それぞれ中止されている。確かに、鳩山政権下での『桜を見る会』でも、過去のブログや記事から、当時の鳩山首相や旧民主党議員の後援会関係者が招待されたことは確認されているのだが……。

 

現在、安倍首相が指摘されているのは、都内のホテルに自身の後援会関係者850人を招いて「前夜祭」行い、さらに当日は貸し切りバス17台に分乗して会場に向かったという疑惑だ。後援会関係者は「前夜祭」の会費として5,000円を払ったというが、ホテルのグレードや料理の質から、とてもこの金額では不可能なパーティだったとも指摘されている。仮に、会費と実際にかかった費用の差額分やバスの貸し切り費用などを、税金あるいは安倍首相のポケットマネーで補填していたとしたら、公職選挙法に触れる可能性が高い。こういった「前夜祭」やバスでの集団移動も、歴代総理は「慣行」としていたのだろうか。

 

安倍政権下では、『桜を見る会』の参加人数も、費用も年々増えており、むしろこれまでの「慣行」が変わってしまったというのが現実ではないだろうか。

 

そもそも、“民間”の世界では「慣行」だからだといって、免罪されることはない。’11年に発覚した「オリンパス事件」では、バブル崩壊時に出た巨額な損失を隠すことが経営陣の長年の「慣行」になっていたが、社長を含む発覚時の経営陣は軒並み逮捕、起訴され、有罪判決を受けた。また、関西電力では、経営陣や原発事業関連の幹部らが、原発のある福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受け取ることが半ば「慣行」と化していたのだが、「慣行」だったことを理由に彼らを擁護する声はほとんど聞こえなかった。

 

「過去にみんなやっていたから」。“民間”では決して通じないこんな言い訳は、より高い遵法精神や倫理観が求められる“政治”の世界では通じるものなのだろうか――。

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