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「寡婦(かふ)」という言葉を聞きなれない人も多いのでは。夫と離婚、または死別して、再婚していない女性をいう。こうした寡婦のうち一定条件を満たす方には、「寡婦控除」という税金を安くする仕組みがある。

 

だが、制度自体を知らない人が多く、なかには「会社に離婚したことを知られたくないから申告しない」という女性もいるという。「女性とシングルマザーのお金の専門家」として、女性からの相談実績が豊富な加藤葉子さんは、つぎのように話す。

 

「離婚して相談に来る方でも、寡婦控除を知っている方はほとんどいません」

 

でも、せっかく税金が安くなる制度があるのに利用しないのは、税金を払いすぎているということ。節税できるありがたい制度を、使わない手はないだろう。そこで、加藤さんが寡婦控除について教えてくれた。

 

寡婦控除には2種類、「寡婦控除」と「特別の寡婦控除」がある。寡婦控除は所得税を計算するときに、収入から27万円を控除、つまり差し引くことができる。住民税の計算では、収入から26万円が控除できる。また、特別の寡婦控除の場合は、所得税では35万円を、住民税では30万円を控除、収入から差し引くことができる。控除が増えると、その分所得が減り、納税額が安くなり節税につながるのだ。

 

【Q1】寡婦控除の申告をしたことがありません。これまでの分も、何とかなりませんか?

 

寡婦控除に関する申告をしていないと、税金を払いすぎている可能性がある。払いすぎた税金を取り戻す「還付申告」は、5年さかのぼって申告できるので、今年の確定申告で、過去の分も申告しよう。

 

「’18年より前の税金は、所得税も住民税もすでに払っていますので、どちらも還付、つまり返金されます。還付金はうれしい臨時収入になりますよ」(加藤さん・以下同)

 

【Q2】寡婦控除や特別の寡婦控除は、税金が安くなるだけ?

 

税金が安くなれば、生活に回せるお金が増える。でも、メリットはそれだけではない。

 

「幼い子の保育料や高校生の授業料、大学の奨学金などは、住民税をいくら払っているかが基準になります。寡婦控除や特別の寡婦控除によって住民税が安くなれば、こうした子どもにかかる費用が抑えられるのです」

 

また、住民税が非課税になれば、大学の給付型奨学金の対象になる。

 

「ひとり親家庭で子どもへの教育をあきらめる前に、ぜひ寡婦控除に関する申告をお勧めします」

 

【Q3】未婚のひとり親には控除がないの?

 

残念ながら’19年分までは、未婚の女性は、寡婦控除や特別の寡婦控除の対象外だった。というのも、“婚姻歴があって現在シングル”の方が寡婦だからだ。

 

「ただ以前から、同じひとり親で生活状況も似ているのに、婚姻歴のあるなしで支援を分けるのはおかしいという批判がありました。私は相談を受けながら、未婚のひとり親にも支援が届いてほしいと何度も思ったものです」

 

それがやっと、昨年末に閣議決定された’20年度の「税制改革大綱」に「一定条件を満たす未婚のひとり親にも、特別の寡婦控除の同等の控除を創設する」という内容が盛り込まれた。今の国会で法案が成立すれば、’20年分から、未婚のひとり親にも支援の手が伸びる予定だ。

 

「未婚のシングルマザーには厳しい家計の方も多いので、早く成立してほしいと願っています」

 

「女性自身」2020年4月7日号 掲載

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