安倍首相は5月25日、新型コロナウイルスの流行が落ち着いたと判断し、全国での緊急事態宣言を解除した。「感染拡大を防止しながら経済活動を再開する新たな日常が始まる」と宣言するも、懸念されるのがクラスター(感染者集団)の発生だ。
「厚生労働省は原則として『特定の1カ所で5人以上の感染者が出たケース』をクラスターと定義しています。5月10日時点で加藤厚労相は『全国で250件ある』と述べました。医療機関で85件、介護福祉施設で57件、飲食店で23件あると明らかにしたものの“それ以上の詳細は公表できない”と口を閉ざしました」(社会部記者)
実際、厚労省は「全国クラスターマップ」を3月末で更新したのを最後に、4月1日以降はクラスター発生場所をHP上で公表していない。
「感染拡大が収まっていた韓国では、今月初めにソウルのナイトクラブでクラスターが発生。21日現在で206人の感染が確認されました。日本でもクラスター対策は急務です」(医療ジャーナリスト)
院内感染など、病院や介護関連施設でのクラスター発生事例が多いのはすでに知るところだろう。そこで病院&介護福祉施設を除いた、4月1日以降のクラスター発生場所を本誌が独自に調査した。感染症専門医で「のぞみクリニック」の筋野恵介院長は言う。
「クラスターの一番の要因は、密閉空間で不特定多数が密集しているところに、一定以上の長時間いることです。15分以上が危険と言われています。逆に密閉空間であっても、一瞬で出られる銀行のATMなどでは起きにくいです」
全国の発生箇所を具体的に見ていくと、保育所や学校が目を引く。
「保育園や学校は、同じ施設の中で“共同生活”を送ることで、感染が拡大しやすいんです。そもそも介護施設でクラスターが多いのは、介護が必要な人たちなので、職員が抱き上げたり食事を食べさせたりと、共同生活の中で“超濃厚接触”をしなくてはならないから。日中の生活を共にするこうした場所は、クラスターが起きやすい環境といえるでしょう。剣道・柔道を行う施設である武道場なども“超濃厚接触”で長時間練習すれば、どうしてもクラスター化するリスクが高まります」
東京都では全日本柔道連盟で19人、愛知県では、剣道特別訓練員の警察官10人が武道館で感染している。また、滋賀県では市役所で11人、兵庫県では警察署で12人。郵便局は東京都で6人、福島県で10人の集団感染が起きている。