世界各国でワクチン開発が進めら得ている(写真:時事通信) 画像を見る

ウイルスとの闘いに希望の光が差し込むニュースが伝えられた。

 

5月21日、イギリスの製薬会社・アストラゼネカ社がオックスフォード大学と共同で開発を進めている新型コロナウイルス向けワクチンの供給を早ければ今年9月から開始すると発表したのだ。

 

「アストラゼネカはすでに今年から来年にかけて10億回分のワクチン生産能力を確保しています。そのうちの3千万回分を9月にも英国内で供給開始する見込みのようです」(医療ジャーナリスト)

 

そこで気になるのが、この「世界初ワクチン」を日本国内でいつ接種できるのか、ということだ。同社の日本法人に確認すると、次の回答が寄せられた。

 

「イギリスで今年の夏には治験の後期段階に入る方向だと聞いています。現時点でいつ日本に入ってくるかは全くわからない状況です」

 

日本への流通に最大の障壁となるのが、世界で最も多くの感染者を出しているアメリカだ。

 

「アメリカの保健福祉省はアストラゼネカ社に最大12億ドルの資金提供を行い、同社から3億回分のワクチンを確保することが明らかとなっています」(前出・医療ジャーナリスト)

 

わずかな希望に懸けたいところだが、NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は、日本国内での流通に懐疑的だ。

 

「ワクチンが日本に入ってくる可能性は低いと思います。ワクチンは複数社で生産しない限り、供給が追いつきません。日本で認可されてもアメリカが優先されますから、数もほとんどないでしょう」

 

さらに、ワクチンの効力についても疑問の声が。北里大学生命科学研究所の中山哲夫特任教授はこう語る。

 

「アストラゼネカ社のワクチンに関しては未知のものという認識です。研究中のすべてのワクチンはまだ臨床の第一段階ですし、副作用の問題もあるので認証は慎重にすべきだと思います。日本に来る可能性も見えない以上、国策として日本国内での製造を目指さなければなりません」

 

5月上旬、安倍晋三首相は来年7月開催予定の東京五輪に向け、ワクチン開発を急ピッチで進めていると明かしていたが……。

 

「大阪大学と創薬ベンチャー『アンジェス』がウイルスの遺伝情報を使った『DNAワクチン』の開発を進めているそうですが、開発できても、国民が接種できるまでには時間がかかります。IOCによると五輪は一度しか延期しないそうですが、それまでにワクチン開発を間に合わせるのはかなり厳しいでしょう」(上さん)

 

死者数が世界でも突出して低い日本。今日も“奇跡”を信じたいが……。

 

「女性自身」2020年6月9日号 掲載

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