期限が明文化されていないことを理由に、臨時国会をいっこうに召集しない安倍政権。現行の日本国憲法でも違憲であると指摘されているが、じつは自分たちの党が掲げる“憲法”だと、より“明確に違憲”となってしまうのだ。

 

2012年4月、当時野党だった自民党は「日本国憲法改正草案」を発表した。国民の権利を制限したり、緊急事態宣言からの独裁制をひらいたりする可能性があることなどから、悪評も多い草案だが、現在も「自民党 憲法改正推進本部」のホームページ上で公開されている。草案では53条の改正案も示されているのだが、こんな条文になっている。

 

<いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない>

 

なんと、現行憲法にはない「要求があった日から二十日以内」という条件が付け加えられているのだ。この改正の意図については、同じくホームページ上で公開されている「日本国憲法改正草案Q&A」で確認することができる。以下、少し長いが引用しよう。

 

<現行憲法では、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないことになっていますが、臨時国会の召集期限については規定がなかったので、今回の草案では、「要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない」と、規定しました。党内議論の中では、「少数会派の乱用が心配ではないか」との意見もありましたが、「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である」という意見が、大勢でした>

 

このとき自民党は、召集期限の規定がないことを問題視し、「20日以内」というのを常識的な期限と考えていた。さらに、臨時国会の召集要求は“少数派の権利”として尊重する姿勢も見せている。ちなみに、改正草案が発表された時点の自民党総裁は谷垣禎一氏(75)だったが、同年10月に「Q&A」の初版が発表された時点では総裁は安倍晋三首相(65)に代わっている。また、改正草案の議論に参加した議員たちは、今も自民党に多く残っている。この改憲草案の「20日以内」という規定に、現在の状況は明らかに反しているが、党内から内閣を戒めるような声は聞こえてこない。

 

裁判所の判決も、憲法学者からの警告にも耳を貸さず、憲法を無視して臨時国会の“召集拒否”を続ける内閣。内容に賛否はあれど、一定の理念を抱いて自分たちで作ったはずの改憲草案の存在すらなかったことにしてしまった与党・自民党。遵法意識も、理念もない政権と思われたくなければ、安倍政権は臨時国会の召集に向けて直ちに動き出すべではなかろうか。

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