■2,700万円分が消失。冷や汗と震えが止まらなかった
「中毒みたいになって、ほんまにヤバかったです」と当時を回想するMさん。そして「18年の、1月16日でした」と、日付をゆっくり口にした。
「今でも、その日が忘れられません。突如、暴落し始めたんです。1日ごとに数百万円ずつ、僕の5,000万円が減っていくんです。1ビット200万円だったのが、半分以下の80万円くらいになって。『もうダメだ』と。そこで売ることにしました。最終的に5,000万円が2,300万。つまり、あっという間に2,700万円分が消失してしまったんです」
そんなMさんに、さらなる追い討ちが。同じころに仮想通貨の取引所であるコインチェックがハッキングされ、仮想通貨NEMが流出。その影響で、コインチェックのサービスが一時停止する事態となった。
「コインチェックには、2,000万円ほど置いていたんです。でも、いっさい出金できなくなって。『もし潰れたら2,000万円がパーになる……』と祈るような日々でした」
ビットコインとNEMによる、ダブルの“仮想通貨ショック”。その影響でMさんは体を壊すことに。
「ビットコインを早めに売っておけばよかったっていう後悔と、コインチェックはこれからどうなるんだろうという不安がすごくて。1ヵ月間、ずっと体調が悪かったです。仕事をしてても、冷や汗や手の震えが止まらないし。胃もずっと痛くて。大好きなアニメも、人生で初めて観る気をなくしました」
Mさんは後悔や不安を抱えながらも、その苦しみを誰にも打ち明けることができなかった。それが何よりも辛かったという。
「みんなに『ほら見たことか』って言われるだろうと。それに1,000万円単位の額をどんどん振り込んでいたとか、それほどの資産を持っていたとか大きい声では言えない話ですよね。コインチェックの取引が再開したら、すぐに出金してひと段落しましたが……。仮想通貨ショックのことは、3年越しでやっと話せるようになったんです」