■子供向けネット販売に立ちはだかった“お母さまフィルター”
同社も時代の変化に応じて従来の雑誌や店舗中心の販売から、インターネット主体の販売への転換は図ってきた。しかし、顧客の特徴上その流れに乗るのにも限界があったようだ。
「そもそもスマホを持っているかも微妙な小中学生に、ネット広告でサン宝石の存在を広めるのは難しかった。ECサイトへの流入も、デジタル広告ではなく紙のカタログからの流入がメイン。そのため、紙媒体に触れる顧客数が減ると、ECサイトでの売り上げも減少しました」
さらに、かつてのハガキに商品番号を記入しての注文に対し、ネット上での注文は、メイン顧客である小中学生にとってハードルが高かったという。
「お子さまが商品を注文する場合、お母さまのスマホで注文することになるため、“お母さまフィルター”がかかります。弊社の商品の多くは、大人にとっては実用性のない”くだらないもの”。そのため、“こんなもの買わなくていいんじゃない”と言われてしまうようで……。ハガキで注文する際にも、16歳未満の場合は、保護者のハンコが必要でしたが、その際に細かく注文内容をチェックする方は少なかったのではないでしょうか」
時代の変化に押され、民事再生に踏み切ることとなったサン宝石。しかし、ピンチをきっかけに、チャンスの萌芽も出てきているという。
「民事再生は世の中的に倒産手続きという捉え方でしょうから、ブランド価値を損なうのではという危惧をしていました。しかし、お客様から多くの応援メッセージや商品購入をしていただいたおかげで、かえって事業の価値が高まったんです」
今後は、クラウドファンディングを通じて、事業継続のための資金調達にも挑戦する。民事再生手続きの申し立てから再生計画の承認までのあいだにクラウドファンディングによる資金調達をするのは、国内で初めての試みだという。このクラウドファンディングに踏み切ったきっかけも、ニュースを知ったかつての顧客からの問い合わせだったそうだ。
「今回の報道を知ったお客様から、『私がクラウドファンディングしてお金をお渡ししたいと思うんですが、できますでしょうか?』とのお問い合わせをいただきました。それはさすがにできませんので、『お気持ちだけで十分です』と申しあげたんですが、そのことが実施のきっかけになったんです」
細かな実施内容は確定していないが、事業継続ための資金調達を目的に、9月中もしくは10月初旬からの実施になる可能性が高いという。返礼品として、昔のカタログを送付するプランも検討しているそう。
「“なくならないで”とか、“思い入れがある”というお声をたくさんいただいています。ありがたいご声援を受けながら、このまま終わらせるのはもったいないと、いろんなスポンサーの方も手を上げていただいております。皆様のご協力を基に、必ず事業を正常運転できるよう再生していきたいと思っています」
大人にとっては“くだらない”かもしれないが、子供にとっては宝石のように価値がある商品を、昭和・平成と日本中の女子に届けてきたサン宝石。今回の出来事は、令和の子供たちにも、そんな喜びを届けるための新たな門出となるだろう。