■品薄状態が値上げの引き金になることも
ベトナムでは、現地調達できない部品などを日本、中国、韓国やタイなどから輸入・加工しているが、タイでも同じようにコロナ禍の影響で製造が遅延・中断しているという。
「すると、タイからベトナムへの輸出が滞り、ベトナムから日本への輸出も滞る……という、負の連鎖ができてしまいます」
こうして、数々の製品に納期の遅れが生じているのだ。
給湯器に関しては、リンナイが自社ホームページに《納期遅延に関するお詫びとご案内》を掲載しており、1カ月待ちもあるという状況。冬本番にお湯が使えなくなるというのはかなりつらい……。
また、取引先の縫製工場がベトナムにあるファーストリテイリングでは、ユニクロのセーターなど4商品の発売を延期している。
自動車メーカー各社も、工場の稼働や生産を停止と発表。さらには、食品関連も。
「ベトナムが産地の冷凍エビは、品薄の影響で価格が高騰しました。食品は商品の生産・販売サイクルが早く、品薄になると値上がりに直結しやすいのです」
同じ冷食では、ニチレイや味の素冷凍食品の冷凍から揚げなどが生産休止になったが、これらは生産国であるタイの感染拡大の影響を強く受けているという。
品薄の要因が、ベトナム、タイのロックダウン以外によるものである製品も。
「ゲーム機やパソコン、スマホなどのコンピュータ関連機器は、いずれも『半導体の供給不足』が深刻に影響しています」
加谷さんによれば、世界各国において、コロナ禍以前から“社会のAI化”を進めるために半導体の需要は急拡大していた。そこに、コロナ禍が輪をかけるように影響を与えたという。
「コロナによる“巣ごもり需要”の拡大により、コンピュータ製品の需要が著しく上昇したことがひとつです。そして、欧米、中国の各企業が『コロナ後』の社会に備えて『リモートワーク』を急速に進めています。すると家庭で作業するための端末などの需要が高まり、半導体不足が世界規模で発生しているのです」
この影響で、アップル社が最新のiPhone13シリーズを減産する見通しであることがアメリカで報道されたばかり。加谷さんは、半導体価格の高騰は少なくとも’22年いっぱいは続くとみている。
すでに品薄状態の製品のほか、今後、「品薄になりそうな商品」を、加谷さんは次のように予測する。
「コロナの感染拡大の状況にもよりますが、パナソニックがベトナムに工場を持つエアコンや冷蔵庫などの白物家電は、品薄や価格上昇があるかもしれません。プリンターはすでに品薄状態ですが、キヤノンはベトナムが主な生産拠点なので、コロナ次第でさらなる状況悪化が懸念されます」
「品薄」は「価格高騰」を招く要因にもなる。最後に加谷さんが、品薄状態の製品の「買いどき」についてのアドバイスをくれた。
「全般的に、いまは価格が上がっている状態。電化製品などは特に、年末年始から来夏にかけて値上げの恐れこそあれ、安売りは期待できません。現在『必要だ』と思うものは、いま購入したほうが安くすむ可能性も大きいでしょう」
量販店の店頭や価格比較サイトなどで気になる商品の価格チェックを「習慣にすべき」と加谷さん。家計の出費を防ぐひと手間を惜しまないようにしよう。