■「人生一回しかないんだから勝負するときは、しなさい」
日大相撲部出身で、現役時代は小兵力士として活躍した舞の海秀平さん(53)の角界入りを後押ししたのも、Y子夫人だったという。
「秀平クンのときには、角界入りに家族が大反対、主人も慎重論だったんですが、あたしは、すぐに賛成したんです。『人生一回しかないんだから勝負するときは、しなさい』って。男と違って、女って突っ走っちゃうのよね。それでよく主人とも喧嘩になる」
夫人が経営するちゃんこ店から現金2億円が見つかるなど、金満ぶりばかり注目される田中夫妻。だが、相撲部監督就任から約10年、田中前理事長がまだ日大の理事ですらなかった時代のY夫人のインタビューからは、また別の姿が見えてくる。
「あれだけの学生を(角界)に送っているんだから、さぞいいお金になるだろうなんて、とんでもありませんよ。学生が角界に入るときは、羽織、着物、雪駄まで揃えてあげて、知り合いに安くしてもらっても、一人10万円はかかるんです」
さらに、現役部員についてはこう答えている。
「学生にしたって遠征試合だといえば費用は持ち出しだし、寮費が出るといっても副食代やらで週に5万、6万と出ます。なかには、学費の面倒を見てる子もいるんです。でも、あたしたち夫婦には子どもはいないし、住むところもあるから残しても仕方ないし、子どもたちのためだからと気にはしてませんけど」
■「やっぱりあの人の喜ぶ顔が見たい」
インタビューから14年後の2008年、田中氏は日大理事長の座に上り詰める。報道では日大の関係者や、日大の取引業者がY夫人のちゃんこ店を詣でて、「理事長就任祝い」や「誕生日祝い」など、さまざまな名目で多額の金品を渡していたという。田中前理事長と会うための窓口となっていたのがY夫人とも伝えられている。
「主人には、思ったとおりの自由な生き方をしてもらいたいの。あたしは、主人を信じてついていくだけです。なんでって、主人が喜ぶから、やっぱりあの人の喜ぶ顔が見たいんですもの」
インタビューでそう語っていたY夫人。夫を信じてついていった先に、破滅が待っているとは、このときは思いもよらなかっただろう。