「生きていると、様々なことが起こる。しかし悪いこと、思い通りにならないことが起きても、厄落としをしたというように考える習慣をつけました」
こう話すのは、渋沢栄一の孫である鮫島純子さん(99)。
何事もポジティブに受け入れられるようになった自分の学びを伝えたいと、近年講演やイベントも依頼があるまま応じて登壇しているという。
渋沢栄一の実像を知る貴重な生き証人でもある鮫島さんは、渋沢の三男で実業家渋沢正雄氏の次女である。近年は経験をもとに著書を出し、近著『なにがあっても、ありがとう』(あさ出版)『97歳、幸せな超ポジティブ生活』(三笠書房)はいまやベストセラーに。
そんな鮫島さんは、3男が幼稚園に入園した27歳の頃、「世間知らずな自分はこのままでよいわけがない、という思いに至った」と話す。精神修養を心がけた鮫島さんは、ヨガ行者の書物や、仏教書を読んだり、キリスト教会に十年通うなどしたのち、心の師に恵まれたという。
「最初は徒歩圏内にキリスト教会があったことがきっかけでした。聖書はもう二千年もの間続いているのだから、『安心して入会できる』という思いもありバイブルクラスに入れていただきました」
その後、洗礼を受け、さらに四谷のイグナチオの門も叩いた。一貫して「生きる」とは何か、そして「生命」とはを問い続けたという。
そしてついにピタリと納得したのが宗教家五井昌久氏の霊覚による思想である。
ある人から紹介され出合った五井氏の著書を手掛かりに、市川にある五井氏の門戸を訪ねたのは62年のこと。何があっても「ありがとう」の感謝の気持ちが穏やかな日々の基盤となることをここで教えられた。
「先生のご著書を読んで、『肉体は期間限定、霊性こそ神の律動を分けていただいた実態で永遠性』と解説されてあり、聖書のなかで理解しがたいところが解りスッと胸のつかえが取れたような。それまで腑に落ちなかった人生について、すべてが解き明かされた気がしたのです。実際にお目にかかると五井先生はすべてが許しで始まり、感謝で終わる。誰でも自由に質問するのですが、すぐに答えてくださいます。人生が楽になり、『ねばならない』『あるべき』の窮屈さはなく、さらに深く修得したいとその日から先生が亡くなられるまで弟子となって学ばせていただきました」
それは以下のようなことであった。
「肉体という衣をまとって地球に来たからにはどうしても食べる、着る必要から足らなくなれば横取りするという邪な心も芽生える。そのために汚したエネルギーはかならずマイナスと感じることになって現れ、消えていかなければならない。であるから、悪いことが起きたら、『厄落としをした』というようにとらえるべきなのです。
魂は学びながら本来のすがたになるべく、浄化し神の国を創る。つまり、平和な世界を築く使命があるということを教えていただいたのです。受け入れがたい災難は自分の成長のため、汚した分の浄化、地上に神の国実現のために汚した分、消えていくプロセスなのだから、何があっても感謝を心がけよう。どんなときも『世界人類が平和でありますよう』と祈る習慣が身につきました。するとよい気がみなぎり、細胞が元気に蘇るのです」
「五井先生ご存命中に直接講師を拝命、各集会所に派遣され共に学ばせていただきました』
五井氏のもとへは氏が逝去した80年以降も5年ほど通った。
「折しも、主人が定年退職で在宅するようになり、講師のお役目を果たせなくなり、自宅で勉強会を開いたり、知人や友人に伝えるようになりました。こうして60年、使命感を強く感じて一人でも多くの方にお伝えしようと、講演会のご依頼のまま多くの方にお話しますと、『人生とは』の解説に『目から鱗』と喜ばれています」
※インタビュー(4)へ続く
(取材・文:本荘その子/撮影:菊池一郎)