株価暴落“岸田ショック”止まらず…50代夫婦の年金が月額9万円減も
画像を見る 私たちは老後を安心して迎えられるのだろうか。

 

■この先20年で年金の積立金が枯渇する可能性も

 

このように、年金財政は待ったなしの状況。近藤さんは、GPIFの資金は早ければ年内にも取り崩されると予想する。

 

「年間の年金支給額は55兆円ほどですが、そのうちの5兆円前後をGPIFの積立金でカバーすることになりそうです」

 

しかし、コロナ禍やウクライナ情勢など、先行きが不透明な状況が続くなかで5兆円分の株を売却すれば、さらなる株価下落を招くことにもつながってしまうという。

 

「海外株式に関しては、売却時に円に換金するため、株安を招く円高を誘発します。株価が下落し、企業の業績が悪化すれば、私たちの賃金はさらに下がることになります」(近藤さん)

 

すると年金保険料がいっそう集まりにくくなり、それを補填するためにGPIFがさらに株を売却し年金積立金を取り崩し、株安を招く--。こうした負のスパイラルに陥りかねないのだ。

 

「年金を『100年安心』にするため、GPIFの資金は30年、40年かけて少しずつ取り崩していくことを目標としているはずですが、早ければ20年ほどで枯渇すると考えています」(近藤さん)

 

20年後といえば、いま50代の人が年金生活に入るタイミングと重なる。仮に積立金が枯渇した場合、私たちの年金受給額はどれほど減額されるのか--。’19年に厚生労働省が年金の未来予想をした「財政検証」を発表して以来、本誌でもたびたび警鐘を鳴らしてきた経済評論家の平野和之さんが言う。

 

「財政検証では、厚生年金に40年間加入した、平均月収35万7,000円の会社員夫と専業主婦がモデル世帯となっています。将来、モデル世帯の夫婦が平均月収に対し、いくら年金を受給できるのか、その割合が『所得代替率』です」

 

現在、所得代替率は61.7%。月収35万7,000円の夫婦であれば、2人の年金受給額は約22万円だ。

 

「現状の所得代替率を維持することは困難だと予想されており、積立金が枯渇した“最悪のシナリオ”では、将来的には所得代替率が36~38%になると算出されています。現在のモデル世帯で所得代替率が36%だとすると、年金受給額は月12万8,000円ほど。じつに9万円以上も減額される計算。最悪のシナリオとはいえ、財政検証はもともとコロナや自然災害などが考慮されておらず、想定が甘いため、現実味のあるシナリオだと思います」

 

株価低迷が続くなか、岸田政権から明るい兆しをもたらすような施策やメッセージは届いてこない。

 

今後、年金受給開始年齢の引き上げ、さらなる減額が予想されるなか、私たちは老後を安心して迎えられるのだろうかーー。

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