■今年の物価は前年比2.5%の上昇に
原油価格は、コロナ禍からの経済活動の再開などにより、’20年以降上昇を続けてきた。
「今年に入って1バレル90ドル前後で推移し、価格としては高いですが、これ以上は高騰しないのでは、と考えられていました。ところがウクライナ情勢の緊迫化により、原油価格は再上昇。3月2日の段階でニューヨーク原油市場では1バレル114ドル台半ばの値をつけました」
この水準は’11年5月以来、10年10カ月ぶりの高値だという。
「今後も、原油は100ドルを超えたレベルで推移すると考えられます。原油価格の上昇は、ありとあらゆる品物の値上がりに直結します。これまでも、世界的な原材料費の高騰のあおりを受けて、国内メーカーの商品はほとんどのジャンルで値上げが発表されてきましたが、ウクライナ戦争で、その流れに拍車がかかるのです」
今年の値上げの影響額を、加谷さんが試算してくれた。
家庭で消費するモノの物価の動向を表す消費者物価指数を見ると、’22年1月は前年同月に比べ0.5%上昇したと発表されている。
「この数値は、消費者物価指数を1.5%ほど低下させたとされる携帯電話各社の値下げの影響が強く、実際には2.0%程度の上昇と考えられます。つまり、ウクライナ戦争の前から、今年の物価は前年に比べ2%上がっているのです」
そこにウクライナ戦争による物価上昇が加わるのだ。
「日本では、原油価格が10%上昇したときその上昇分がすべての商品に転嫁されると、消費者物価指数が0.3~0.4%上がるといわれています」
しかし、値上げに抵抗感の強い日本では、店頭に並ぶ全メーカーが値上げするわけではなく、全商品のうち実際に値上げされるのは3割ほどだという。つまり、原油価格が10%上がると、消費者物価指数は0.1%上昇することになる。
「今年の原油価格は100ドルを超えたところで推移するでしょう。前年の価格は70ドルほどだったので、今年の原油価格は去年に比べて約50%の値上がりに。よって、消費者物価指数は0.5%上昇する予測が立ちます。つまり、ウクライナ侵攻前の消費者物価指数予測の2%に0.5%を加えた『2.5%』が、今年の出費増額率です」
’21年の家計調査をもとにすれば、50~59歳の勤労世帯(2人以上)の場合、平均的な消費支出が年間410万2,992円のため、同じ買い物をしても、年間10万2,575円出費が増えることになる。